米Qualcomm Technologiesは1月31日に都内のホテルで記者説明会を開催し、同社のMesh Networkについて説明を行った(Photo01)。
今回の主要なテーマはWi-FiベースのMesh Networkである。もともとQualcommは2016年のCOMPUTEXにおいて、Wi-Fi SON(Self-Organizing Network)と呼ばれるWi-FiベースのMesh Networkのテクノロジを発表している。
参考として記載した塩田氏の記事にもあるように、「Wi-Fi SONは、アクセスポイントとスマートフォンなどの間で情報交換することで混雑したバンドから別のバンドに移行するといった動作を可能にするもの」であるが、単にそれだけでなく、Mesh Network的なトポロジーで動作させることをも可能とする技術である。同社によれば、すでにQualcommはWi-Fiマーケットでリーダー的なポジションにあり(Photo02)、そして技術的には同社のチップを利用していればWi-Fi SONが利用可能=Mesh Networkとして動作させられる、とする。
すでに米国のリテール向け製品の40%がMesh対応で、このうちの90%以上を同社のチップセットが占めている、とする。また、すでに多くのメーカーが対応製品をリリースしており、日本でもBuffaloが対応製品をリリースするそうである(Photo03)。さらに現在は米国が中心だが、今後は世界中に展開されてゆく見込みだとする。
ちなみにMesh Networkのメリットとして氏が挙げたのは、例えば米国の場合は到達距離の拡大である。従来だとアクセスポイント+リピーターの構成になることが多いが、環境が変わるとリピーターの位置とか設定を変えないといけない場合がある。これがMesh Networkだと自動で調整してくれることになるので、ずっとユーザーメリットが大きいという。日本の場合でも、例えば3階建ての家屋の3階にアクセスポイント、1階にクライアントなんてケースでリピーターを挟まないと通信が出来ないようなケースでも、Mesh Networkにすると到達するという話であった。ただ日本に関しては、隣接する家屋のアクセスポイントからの電波が混入する、などというケースであっても、Mesh Networkにすることで自動的に最適な環境になるように調整される点がむしろメリットになるだろう、という話であった。
ただしこのWi-Fi SON、今のところはQualcommの独自技術である。Wi-FiのMesh NetworkといえばIEEE 802.11sになるのだが、これとの互換性はまったく無い。そして利用できるのも今のところQualcommのチップセットのみである。これに関して氏は「今はまだテクノロジーを進化させ、それをユーザーメリットに繋げるようにしている段階」とした上で「もちろん、我々もWi-Fi Allianceに加盟しており、相互接続性が重要な事は理解しているので、いずれは例えば寄贈(Contribution)するといった事もありえる」とはしたものの、今のところ具体的にいつ、という話にはなっていない。これはWi-Fi Allianceの方も同じで、2017年初頭のプレスリリースで、SONが活用されることになるとしてはいるものの、具体的に標準化とか認証(Certification)といった動きは「表面的には」存在しない。なので、今のところはQualcommのみのトレンドということになるだろう。とりあえず現時点ではサービスソフトウェア向けにWi-Fi SONのSDKにあたるものを提供はしている、との事だった。
ちなみにWi-Fi SONという名前ではあるものの、実際はBluetooth MeshやZigBee Mesh/Threadといった複数のMesh対応メディアを包括的にカバーするのだそうで、なので長期的には複数のメディアをまたがる形でのMesh Networkが構築可能になりそうで、そうなると確かに今のWi-Fi Allianceではちょっと力不足かもしれない。