―― イメージセンサー事業における車載市場への取り組みはどうするのか。また、自動運転時代において、ソニーはどう貢献するのか。

平井氏:ソニーが車載用イメージセンサーの商品化を発表したのは、2014年のこと。そのころから、パートナーはどこになるのかという質問を多くいただいていた。相手がある話なので、軽率には発表できなかった。現時点で、どんな会社と仕事をしているのかを一部発表させてもらった。

車載領域におけるパートナー企業には、トヨタ、日産、デンソー、ボッシュ、ヒュンダイ、KIA、NVIDIA、モービルアイがある。今後、具体的にどんなことをしているのか、ほかにどんな企業とパートナーシップを組んでいるのかを、順次発表できる。ただ、車載向けイメージセンサーが、ソニーの半導体事業の営業利益に直結していくのはまだ先であり、納期はどうするのか、どの車種に採用するのかといった議論もこれから。

  • ソニー、平井一夫氏

平井氏:現時点では、いつまでに、どれぐらいの事業になるのかといったことは明確にできない。まだ見えていないというのが正直なところ。まずは、スマートフォン向けや、デジタルカメラやカムコーダーといったデジタルイメージング向けの既存領域において、いかにビジネスを大きくしていくかがポイントになる。

完全自動運転については、技術の方が進展しており、日本の道路交通法をはじめとする各国のルールでどう対応するのか、あるいは保険業界を含めてどう考えていくかという議論が遅れている。技術開発はどんどん進めていくべきだが、同時に自動運転が定着するには、ルールや保険をどうするのかといったことを整理することが大切であり、そうしたことが整った国や地域から完全自動運転が普及することになるだろう。日本でも特区で実験を行うことはいいことだと思っている。技術の環境に、インフラの環境が追いつくことが重要。

ただ、ソニーがクルマ作りに直接入っていくことはない。あくまでもイメージセンサーの技術で、自動運転の領域で貢献していくことになる。とはいえ、単純にイメージセンサーを供給するだけでは、それ以上の価値にはつながらない。

ソニーのイメージセンサーの技術に、ソニーならではの付加価値を提供する「プラスα」型のビジネスモデルに持って行きたい。そうしないと他社とは何が違うのかということになるし、技術的な差だけだと追いつかれる可能性がある。ソニーの特徴が出せるプラスαの協業の姿を考えていかなくてはならない。

これはスマホ向けのイメージセンサーの供給でも同じだが、単に部品を供給するだけでなく、先方がこういう仕様で、こういうことをしたいという要望に対して、一緒に開発する技術力がプラスαになっている。プラスαがないと、単なるサプライヤーの1社になってしまう。それは避けたい。

私は、イメージセンサーでは、マーケットリーダーになりたいと考えている。ソニーはそれだけの技術力を持っている。あとは自動車メーカーや車載機器メーカーと緊密なパートナーシップを組んで、それを実現していくことがポイントになる。

自動車以外では、ファクトリーオートメーションや街中の至るところに監視カメラが設置されるなかで、イメージセンサーが利用される機器が増加することが見込まれる。クルマだけでなく、当社のセンサーを評価してもらえるBtoB領域には積極的に入っていきたい。