―― CES 2018では、aiboを初めて海外で展示した。手応えはどうか。

平井氏:日本での発表後、aiboは米国のメディアでも取り上げられた。CESの会場にaiboを展示したのは、一度は本物を見て確かめてもらい、様々なコメントを得たいと感じたこと、そして、海外の人たちはaiboをどう見ているのかを知りたかったから。

私は、aiboをとても可愛いと思うが、これが日本人の目で見ているから可愛いものなのか、それとも米国人や中国人にとっても可愛いと思ってもらえるのか。そうしたリアクションを知りたいという目的もあった。まだ正式に発表する段階ではないが、リアクション次第では海外でも展開していきたいと考えている。

ソニー、平井一夫氏、aibo

aiboは部品点数が多く、製造に時間がかかる。日本でも予約で完売となっており、まずは日本の需要を満たすことが大切だ。その上で、生産能力を向上させ、どの地域であればカバーできるのかといったことを議論し、台数を確保しながら海外展開をしていくことになる。

仮に、「米国で来週から販売を開始するが、提供できるのは150台だけ」というのでは話にならない。むしろ、なんでそれだけの台数しか用意できないのに発表したのかということになる。

私はプレイステーションビジネスの経験が長く、そうした点ではいろいろと勉強もさせてもらった。ちょっと時間はかかってしまうかもしれないが、確実に供給できることを前提に発売することが、お客さまにとって一番不利益にならない形での市場投入になる。日本では1月11日に発売したが、今後の市場展開を見ながら海外展開を考えていきたい。

―― aibo以外にも、挑戦的な商品に取り組む考えはあるか。

平井氏:私が社長に就任した2012年は業績が苦しいときだったが、業績が上向くときに向けてTS事業準備室を設置し、Life Space UXを開発した。「この商品は面白い」と思える取り組みがなかったら、業績が回復しても、「面白くない会社」になると思っていたからだ。

いまから4年前にはSAP(Seed Acceleration Program)をスタートし、自由な発想で様々な商品を開発し、市場に投入してきた。aiboは、自分の夢の実現とか、ここまでソニーがいい形で復活してきた象徴として、「やるしかない」と1年半前に決めた。ソニーらしいと思ったのは、関係部門へ何時に行っても、やっていることが楽しいという雰囲気があり、目が輝いていたことだった。

社内には「なんでいまさらaiboをやるんだ」と思っていた社員もいただろうが、社長直轄のプロジェクトとして進めたため、「平井がやると騒いでいる」というと周りは文句が言えなくなる(笑)。社長がプロテクトして、好きなように開発に取り組むことができる環境を整えた。

ソニーが持つ底力のすごさは、1年半という期間で、あそこまで作り込んでしまうところにある。aiboでは、私も感動体験をすることができた。これを別の商品で体験したい。「今度は、これをやろう」というのをいくつか投げかけてみたい。ソニーの社員は、こういうものを、いつまでに、こんな形でやろうという目的があると、すごい力を発揮する。