スウェーデンの家電メーカーであるエレクトロラックスが1月17日、ロボット掃除機の新製品「PUREi9(ピュア・アイ・ナイン)」を発表しました。同社としては2001年に発売したロボット掃除機「トリロバイト」に次ぐ、2台目17年ぶりの新ロボット掃除機です。発売は3月2日の予定で、市場想定売価は13万円前後(税別)。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    エレクトロラックスが17年ぶりに発売したロボット掃除機「PUREi9」

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    左が「PUREi9」、右が2001年に発売された初のロボット掃除機「トリロバイト」。PUREi9は最新技術を多数採り入れながらもかなり小型化されています

発売に先駆けて行われた製品発表会に出席した、エレクトロラックス・ジャパン代表取締役社長の長岡慶一氏が、17年という時を経て、満を持してロボット掃除機の市場に再参入する意向を明らかにしました。その理由として、ロボット掃除機が抱える2つの課題を克服できたことを挙げています。

1つ目は"自律性"。つまりロボット掃除機が自動で動き回り、掃除が終わると充電台まで自ら戻ってこられることですが、発表されたPUREi9は「途中で止まってしまうということはない。旅に出たからには必ず帰還するロボット掃除機です」(長岡氏)と自信を見せます。

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    新製品発表会で挨拶する、エレクトロラックス・ジャパン代表取締役社長の長岡慶一氏。商用のロボット掃除機を世界で初めて作ったのは同社だと言います

そしてもう1つが掃除機としての基本性能の高さ。長岡氏は「ロボット掃除機といっても本質は掃除機なので、掃除機並みの性能がなければなりません」と語りました。

そこで採用されたのが「3D Visionテクノロジー」と呼ぶエレクトロラックス独自の技術。本体前方の左右2カ所に赤外線レーザーの発光部を備え、物体に当たって反射したレーザーの光を前方中央のカメラで捉えて、障害物を認識します。仕組みとしては、アイロボットの「ルンバ」やダイソンの「Dyson 360 Eye」など他のロボット掃除機に搭載されている"SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)"と変わりませんが、障害物をCADデータのような3Dで解析するため、より明確かつ高い精度で障害物を見分けられるのが特長です。

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    レーザーは本体前方に備える左右の発光部から発せられ、物に当たって跳ね返ったレーザーをカメラで捉えて障害物を認識します

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    障害物を立体的に解析できると同時に、位置情報の認識も行える「3D Visionテクノロジー」と呼ばれる独自の技術

レーザーの受信部にあたるカメラを本体天面でなく、レーザー発光部と並んだ前方に配置しているため、障害物に当たって跳ね返ったレーザーの検知漏れが少ないのです。前面のカメラによって、進む少し先の景色が見通せるため、ぶつかる可能性のある障害物や段差を見極め、高精度で回避します。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    床に置かれた小さなヌイグルミにギリギリまで近づいて体当たりすることはありませんでした

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    腰ぐらい高さのある台の上で自由に動き回る「PUREi9」。端のギリギリのところを走行しながらも、落下しそうになるという危うい様子はまったくなし。カメラが天面でなく前方にあるため、進行方向の状況をダイレクトに認識できているという証拠です

構造面では三角形をベースにした独自の形状を採用。W32.5×H8.5×D28cmの本体寸法に対して、約20.5cmもの吸引口とロールブラシを先端に備え、効率よくゴミを吸い込むことが可能です。吸引部は本体前方の先端から約3cmの位置にあり、本体中央に備える場合に比べてゴミを直接吸い込みやすくなっています。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    本体は三角形がベースとなった形状

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    本体裏面。サイドブラシが本体右側の角にあるほか、吸引部が前方3cmのところにあるのが特徴です。幅広い吸い込み口で効率よくゴミを吸い取ります

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    ロールブラシの長さは約20.5cm。樹脂素材と毛ブラシを組み合わせたもので丸洗い可能です

ロボット掃除機は一般的に、"サイドブラシ"と呼ばれる、部屋のコーナーや家具の足元のゴミを掻き集めるためのブラシが、本体右側前方に1つだけ搭載されています。他社のロボット掃除機は本体底面にもセンサーを装備していることが多く、ブラシの毛が底面のセンサーを覆わないよう、毛の長さや本数を調整しています。

しかしPUREi9は、本体底面のセンサーがないことから、他社のロボット掃除機よりも、毛足の本数が多く、長いのが特徴です。しなりのよい柔軟な素材のため、床面に接した際にはサイドブラシが床に貼りつくように密着し、すき間ができにくくなっています。これにより、ブラシがゴミを弾き飛ばしてしまうおそれや、コードなどを引っ掻けてしまう可能性を減らしているのです。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    8つの束から成るサイドブラシ。他社のものと比べるとかなりの本数。底面にセンサーがないことから、サイドブラシがセンサーを覆い隠すことがないため、毛の本数を増やすことができるとのこと

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    サイドブラシの毛は長めですが、柔軟性のある素材のため、床に接した際は貼りつくようにしなります。床面との隙間が少ないことから、コードを巻き込みにくい利点がありますね

また、通常のロボット掃除機では吸引部のロールブラシとサイドブラシのモーターは共有されており、連動して動くタイプが多いなか、PUREi9は車輪駆動用と吸引部のロールブラシ用、サイドブラシ用と独立した3つモーターを備えています。サイドブラシ専用のモーターにより、回転速度を単独でコントロールできる点も、ゴミの弾き飛ばしやコード類の絡まりを防ぐ強みとなるでしょう。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    強力に空気を巻き上げることのできる高性能ファンにより、高い吸引力を実現しました

掃除機としての本質性能に不可欠な吸引力に関しては、毎秒約10Lもの気流を発生させる高性能ファン搭載をアピール。確かな吸引力で、フローリングや絨毯など床の素材を問わず、ゴミを強力に吸い取ることができるそうです。

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    本体天面にカバーはなく、ダストボックスはそのまま取り出せます

PUREi9は三角形に近い形状のため、円形のロボット掃除機に比べると体積は小さくなりがちですが、それでも700mlのダストカップ容量を実現。動物の毛ですぐにダストボックスがいっぱいになってしまいがちな、ペットを飼っている家庭にも適した仕様です。

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    ダストボックスは二重のフィルターで排気にゴミを漏らしません。丸洗いも可能です

連続運転時間は通常モードで約40分、出力を抑えることでバッテリーを長持ちさせる「ECOモード」で約60分。充電時間は約3時間ですが、2時間で90%まで復活する急速充電機能も備えています。運転中にバッテリー残量が低下した場合には、自動で充電台に戻って急速充電する、外出中の掃除も安心して任せられますね。

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    本体側の操作パネルは天面に。時刻表示とモードを選ぶボタン、ホームボタン、運転/停止ボタンとシンプル

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    薄型の充電台は壁際にぴったり設置しておけます。進行方向にある物体を的確に認識し、充電台の壁側ギリギリまで近づけます。充電台の台座部分まで掃除できました

本体には無線LANを搭載し、専用のスマホアプリと連携して、リモート操作やスケジュール設定なども行えます。掃除履歴をマップ表示したり、クラウドで掃除データを集積するといった機能は採用されていないものの、技術的には可能な状態で、アプリのアップデートにより今後対応していく意向です。

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    専用スマホアプリ。「PUREi9」とは無線LAN経由でつながり、遠隔操作できます

製品発表会の会場で披露されたデモンストレーションでは、本体前方に備えられたレーザーからの反射光を、受信部のカメラが捉え、それをもとにロボット掃除機が周囲の状況を3Dでしっかりと把握できている様子が確認できました。障害物に体当たりすることなく、ギリギリのところまで近づける認識精度と回避能力の高さに感心しました。

PUREi9は、現状のロボット掃除機市場においては高価な部類です。しかし、「掃除はしっかりしてほしいけれど、家財に打撃は与えてほしくない」という人にとっては、納得できる製品だと思います。

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    物に体当たりしないとはいえ、前方はバンパー構造。万が一の衝突時の衝撃を和らげます

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    後方には排気口を備えています。運転中の排気の勢いは比較的、穏やかでしょうか

  • ロボット掃除機「PUREi9」

    新製品発表会にゲストとして登場した俳優の哀川翔さんと、女優の高田万由子さん。新製品に対して「生き物のよう」と愛着を示し、名前を付けて家族の一員として迎え入れたいと語りました。