Adobeは今回のイベントで、、10年目を迎える写真編集ソフトウェア「Lightroon」をクラウド化し、マルチデバイスで写真を編集できる環境を提供するという、ハイライトとなる発表を行った。

写真編集アプリ「Lightroom CC」はクラウド版へ移行し、モバイルアプリでも強力な編集機能を手に入れた

写真やビデオは膨大なデータを扱うことになるため、これまでAdobeはクラウドに全てのコンテンツを置いて活用するスタイルを提案してこなかったが、Lightroom CCのプランにはこれまでの20GBから大幅に拡大する1TBのストレージプランを用意し、ワンタッチでポートフォリオを作成する機能を備えた。

クラウドベースのアプリによって、モバイルアプリも、デスクトップ版に劣らない機能を実現することができるようになる。フォトプランにLightroomのモバイル版のみが利用できる新しい月額480円のプランを用意したのも、モバイルアプリでのクリエイティブな作業がより充実したことを意味していると言える。

Adobeによると、Adobe IDをモバイルアプリから作成したユーザーの数は5,600万人にのぼり、Creative Cloudのユーザー数増加に寄与している。これまでモバイルを「入り口」としてきたが、モバイルでのパワフルな作業の実現は、すでにCreative Cloudを利用しているプロフェッショナルに対する新たな訴求にもなる。

Lightroomを含むフォトプランには、「Adobe Spark」のプレミアム版が含まれるが、このAdobe Sparkは、モバイルですぐに始められるクリエイティブアプリの入り口ともなる存在と言えよう。

Adobe Sparkは、モバイルやウェブから、画像、Webページ、ビデオを簡単に制作できるツール。プレミアム版では企業ロゴのテンプレートを配置することができ、ビジネスの現場で身近なデザインツールとして活用できる

Adobe Sparkシリーズには、SNSなどの画像を簡単に作れる「Post」、簡単にWebページを作成できる「Page」、そしてストーリーテリングのビデオを作成できる「Video」の3つのアプリが備わっており、Webからも利用可能となっている。これらは、テンプレートや用途を選び、自分の写真を利用するだけで、デザインされた素材を作ることができる、Adobe Senseiのパワーをすぐに体験できるアプリだ。

例えばInstagramストーリーズに投稿する写真やビデオを作成するのも便利だし、ブログや記事の画像を作ることもできる。ただ写真を撮って投稿するだけだったSNSに、ちょっとした加工を加えて、質の高いデザインへと昇華させることができるのだ。

たしかにインスタントなクリエイティブの実現は、デザインに対してクリエイティブのプロが介在する場面を下げてしまうかもしれない。ただ、Adobe Sparkで用いられるテンプレートを作ることが、デザイナーやアーティストの役割となり、新しい仕事を生み出すこととなる。

モバイルアプリによる創造性の一般化は、クリエイターの仕事を奪うよりは、新たなものを作り出すという役割をより明確化していくことになるだろう。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura