• 継ぐのは誰か?

いまや、コンピュータといえば、GUI(graphical user interface)が当然という風潮だが、過去には、コンピュータとは、端末を介してCLI(Command Line Interface)/CUI(character user interface)で、利用するのが普通だった。端末はターミナル(Terminal)とも呼ばれ、通信用のテレタイプ装置を使ってコンピュータと接続するもの。当初は、文字の送受信のみだったため、文字でコマンドを送信して、その応答を文字で受け取っていた。

UNIXなど、1970年台、あるいはそれ以前に作られたオペレーティング・システムは、基本的な作業をCLIで行う。特にUNIXでは、システム設定やアプリケーションの設定もテキストで記述され、これをテキストエディタで編集することで設定を行うことが一般化した。いまでも、LinuxなどUNIXの流れを汲むオペレーティング・システムには、この慣習が残っている。

コンピュータにGUIが導入されたとき、GUI上のアプリケーションとして端末エミュレータ(ターミナル・エミュレータ)が作られた。著名なものの1つに、X Windows用のxtermがある。端末エミュレータとは、ソフトウェアで端末の振る舞いをエミュレートし、GUI上のウィンドウ内にテキストを表示し、CLIを利用可能にするソフトウェア全般をいう。xtermなどにより、GUIの中でCLIを使えるようになった。

現在のWindowsには、Windowsターミナル(以下ターミナル)と呼ばれるオープンソースのターミナルエミュレータが付属する。ターミナルは、安定版と次の安定版候補のプレビュー版があり、プレビューを何回か繰り返したのちに安定版とするリリース方法が採用されている。現在の安定版は、10月3日にリリースされたv1.25、プレビュー版は、同じ日にリリースされたv1.26である。

ターミナルは、初期には、JSONを使って設定を行っていたが、現在ではGUIによる設定が可能になっている。プレビュー版改良点の1つは、GUI設定の改良である。これは、ソフトウェアの開発が長期になり、様々な機能が搭載されていくと避けられない部分。初期段階では、表現力の高いテキスト設定(JSON)のみに任せられるが、いずれはGUIとして対応する必要が出てくる。今回の改良では、大きな構造は変わらないものの、「Actions」が「Shortcuts」になり編集機能が改良され、Profilesの項目構成が変更になった(写真01)。

  • 写真01: Windows ターミナルプレビュー版v1.26では、設定項目の表示がアイコンを併用するモダンなものになり、それまでトップレベルにあった登録済みプロファイルがプロファイル項目の下に入った。ウィンドウ左上にワークスペースアイコンが新設され、名前を付けたウィンドウの状態がここに登録され、他のウィンドウをここからアクティブにすることもできる

    写真01: Windows ターミナルプレビュー版v1.26では、設定項目の表示がアイコンを併用するモダンなものになり、それまでトップレベルにあった登録済みプロファイルがプロファイル項目の下に入った。ウィンドウ左上にワークスペースアイコンが新設され、名前を付けたウィンドウの状態がここに登録され、他のウィンドウをここからアクティブにすることもできる

もう1つの新機能は「ワークスペース」である。ターミナルには、以前からウィンドウに名前を付けられ、あとから名前を使ってウィンドウを特定してアクションを実行できた。今回は、開いているウィンドウに名前を付けると、そのときのタブやペインなど使われているプロファイルとその表示場所を記憶する。ウィンドウを閉じても、ウィンドウ内のタブ、ペイン構成は記録されており、ウィンドウに付けた名前で、あとから再現が可能になる。たとえば、作業別にワークスペースを定義しておけば、簡単に準備が完了する。そのために、ウィンドウのタブバー左端にワークスペースアイコンが新設された。リリースノートには、「初期的な実装」とあるので、今後、機能の充実が図られるはずだ。

ターミナルは、現在ではWindows 11の標準アプリケーションであるため、Microsoftストアで自動アップデートが行える。また、wingetコマンドやGitHubからのダウンロードも可能だ。

・GitHub microsoft/terminal リリース
https://github.com/microsoft/terminal/releases

今回のタイトルネタは、小松左京の「継ぐのは誰か?」(角川書店、早川書房など。初出1968年SFマガジン)である。未来のコンピュータの予測が正確といった評価もあるが、筆者は、いわゆる「新人類」ものの傑作の1つと思っている。新人類は、高い知性や超能力など、旧人類を越える力を持つのに対して、旧人類に対して少数派でしかないという欠点を持つというのが、基本パターン。本作では、電子、電磁気を操る力で旧人類が依存しきっているコンピュータを直接操作するという点がこれまでの新人類ネタとは異なる。ここから逆に考えて、コンピュータは旧人類が依存しきってしまうほどに便利なものになっている必要がある。コンピュータに対する予測が正確だというよりも、人類が依存するのなら、これぐらい便利になっていなければという思考の結果であろう。こうした社会的な部分に常に片足が掛かっているのが小松左京の魅力の1つ。しかし、そうだとすると、最後の事件は、事故ではなく、裏に政治的な意思が働いていたとも読める。