NECは10月25日、処理性能と拡張性を強化し、HPC領域の科学技術計算に加え、AI・ビッグデータ解析、資源探査、画像解析、セキュリティなどの新しい領域にも活用可能なプラットフォーム「SX-Aurora TSUBASA」を発売すると発表した。それに合わせ、同日都内にて報道陣向けの説明会を行った。

説明を行ったNECの執行役員常務 福田公彦氏。手に持っているのが、「SX-Aurora TSUBASA」ベクトルエンジン

近年、IoTの爆発的普及に伴い、世界規模で扱われるデータ量は2年ごとに倍増している。また、それら大量のデータはより高度なAI処理を要求するケースも増えていくことが見込まれるなど、大量データを高速かつ高度に処理することが求められている。これらのニーズに対し、従来ではHPC機器での処理が一般的であったが、システム規模も大きく利用価格も高額となるため、利用ユーザは一部の機関・企業などに限定されていた。ただし、今後これらの処理ニーズは、幅広い業態業種に拡大することが見込まれる。

このような状況の中、同社は高性能と導入しやすさの両立を目指し、SX-Aurora TSUBASAを開発した。

「SX-Aurora TSUBASA」A100-1 1VE搭載タワー

「SX-Aurora TSUBASA」A300-2 2VE搭載シャーシ

同製品は、ベクトルプロセッサをカード型VE(ベクトルエンジン)に搭載しており、新開発したカード型VEに搭載されるベクトルプロセッサは、新たなメモリ搭載構造を採用し、「SX-ACE」の単一コア性能をさらに約5倍高速化させた。さらに、単一コア性能は307GFlops(倍精度)、および単一コアメモリ帯域は150GB/秒を実現するコアを8コア採用し、2.45TFlopsの演算性能と1.2TB/秒のメモリ帯域を実現する。これにより、多数のプロセッサが必要と言われるスカラ型並列コンピュータと比較して、少ないプロセッサ数でも、複雑な科学技術計算において高い性能が得られ、並列プログラミングの負担も軽減される。

CPUと6個の3次元積層メモリ搭載技術を採用。単一コア性能は「SX-ACE」の約5倍高速化した

また、オープン環境との融合でより使いやすくなり、利用範囲拡大へとつなげる。x86ホストサーバ(OS:Linux)とカード化されたVEが連動して動作する新しいアーキテクチャを採用し、スカラー(x86)向けアプリケーションはホストサーバ側で稼動させ、ベクトル性能が高いアプリケーションはVEで稼動させるなど、より多くのアプリケーションが利用可能なハイブリッド環境を提供する。

オープン環境への対応。従来SXシリーズの専用OSから、Linux OSに移行し、オープン環境での資産が利用可能となる

さらに、VEをカード化したことにより、エッジ用(VE数:1)、オンサイト用(VE数:2、4、8)、データセンタ用(VE数:64)まで、幅広い筐体サイズへの対応が可能となり、計算能力ニーズに応じた選択を可能とした。これにより、従来の大規模データ解析を行っているユーザに加え、AIやビッグデータ解析を行う企業や研究所の研究者・開発担当者なども、高性能ベクトルマシンを利用することができるようになった。

さまざまな用途に向けた豊富なラインアップ(データセンタモデル、オンサイトモデル、エッジモデルの3種)を用意

そのほか、1ラックあたりでは最大156TFlopsのラック演算性能、および76.8TB/秒のメモリ帯域を実現している。ラックの接続数には制限がなく、ユーザーの利用環境に合わせた大規模なシステムを構築することが可能であるとしている。

なお価格は、エッジ・オンサイトモデルが170万円~(税別)で、提供予定時期は2018年2月以降。また、データセンタモデルが1億2000万円~(税別)で、提供予定時期は2018年7月~9月となる。販売目標は、2018年~2020年に関連事業合わせ、グローバルで1000億円の売り上げを目指すとしている。

「SX-Aurora TSUBASA」のモデル詳細