それについて加地氏は話す。「欧州は魅力的なマーケットですが、ハードルが高いんです。フランス語、スペイン語、ドイツ語といろいろあって言語の問題が大きい。米国のほうがやりやすいですし、熱心に取り組むアスリートも多い。資金調達を考えると、投資文化のある米国のほうがやりやすい」。

そうはいいつつも、加地氏は、欧州での展開についてもすでに手を打っているという。それを端的に表すのは、パワーメーターの開発元、独SRM社との戦略的提携だ。

SRMとの提携が生み出すもの

スポーツにおいて、デバイスの魅力を一気に高めようとする場合、理想的な展開のひとつとして、世界のトッププロへの機材供給がある。トッププロに使われ続けることで、デバイスの認知度も飛躍的に高まり、ブランディングが可能になる。しかし、それは誰もが考えること。機材供給の道を拓くのは難しい。その可能性を一気に高めるのが、SRM社との提携なのだ。

SRMは古くから多数のワールドチームにパワーメーターを供給し、多数の勝者を生み出している。ワールドチームからの信頼は厚い。SRMと手を結ぶことで、流れに乗るチャンスが大きく増やせる。「自転車競技にはムラ社会の側面がある。話を聞いてもらうだけでも苦労する。ただし、SRMが勧めるものなら別。SRMがいれば話を聞いてもらえるハードルがもまったく違う」。

SRMとの提携発表と時を同じくして、加地氏はフランスを訪れていた。7月のフランスは、ツール・ド・フランスの開催月だ。現地を訪れたのはもちろん、ワールドチームへの機材供給の道を拓くためだ。「ありがたいことに、各チームとも、存在は知ってくれていた。TYPE-Rの写真は見たことあると。どこの誰がというのは知らないでしょうけど、手応えも得られました」。

プロへの機材供給の道が拓けるならば、LEOMOにとって、それは認知拡大以外の大きな意味を持つ。実は彼らにとっては、こちらが本命かもしれない。

それは、世界最強クラスの選手の生データが得られることだ。自転車に限れば、平地を走行するとき、上り坂をこなすとき、ダンシング(立ちこぎ)をするとき、スプリントダッシュをするとき、あらゆる面におけるペダリング、フォームなどをセンシングする。

これは今後TYPEーRを使うユーザーにとって大きな価値となり、市場の裾野も広げていくだろう。