Kirin 970がAI用のNPU(ニューラルネットワーク・プロセシング・ユニット)を搭載したのは、「AIをモバイルで使う方がメリットがある」(Yu氏)からだ。その理由としてスピードやセキュリティといった面を挙げる。

デバイス上のAIでは、タスクスケジューリング、ロードバランシング、メモリ割り当て、UIレンダリング、グラフィック処理、AIコンピューティング、カメラの画像処理といった機能を受け持つ。これによって、リアルタイムのコンピュータビジョン、低消費電力のAR、正確な翻訳など、さまざまな機能が実現できるとしている。

デバイス上でAIが動作する機能

さまざまな機能を想定する

AIコンピューティングのプラットフォームとしてオープンな環境を用意する

開発キットなども準備する

AIを使って最適なスマホ撮影を

写真撮影では、シャッターを切るのが遅れてシャッターチャンスを逃したり、ピントが外れてしまったり、手ブレ・被写体ブレが起きたりといった問題が起きる。それを解決するためにKirin 970では2つのカメラISP(Imaging Signal Processor)を搭載。伝送速度は25%向上し、レスポンスは15%向上。レーザー、深度、コントラスト、位相差という4つのAF、4レベルでの動き、顔、オブジェクトの認識、拡張されたノイズリダクションと低照度環境の検出による高画質化などを実現する。AIの活用では、オブジェクトとシーンの認識による最適な撮影を可能にするという。

カメラでの失敗例

その解消のためデュアルISPを搭載

その結果、動体への対処が最適化されている

夜景もさらに美しく撮影できるようになった

これまでのカラーセンサーとモノクロセンサーのデュアルカメラとデュアルISPにAIを加えてカメラを進化させる

AI活用例として被写体、シーンの認識を行う

Kirin 970搭載スマホ「Mate 10」を10月発表

モバイルネットワークでは、4×4MIMO、3CC CA、256QAMをサポートすることで、下り最大1.2Gbpsを実現するCat.18に対応。デュアルSIMで、どちらも4G対応に加え、VoLTEもカバーする。高速移動中でも安定した通信を実現するために、同社の社員が40万kmにも及ぶテストを行ったそうだ。中国新幹線、ドイツ高速鉄道(ICE)、そして日本の新幹線でもテストを行ったそうだ。

「4.5G」として高速化の技術を導入

LTE Cat.18による1.2Gbpsの高速通信が可能になる

デュアルSIMの端末では両方とも4Gの通信に対応し、VoLTEによる音声通話も可能

40万kmにも及ぶ高速鉄道のテストで安定性を確認

こうした高速なモデム、もっともパワフルで高効率なプロセッサ、そして端末上でのAIを実現するのがKirin 970であり、Yu氏はその最初の端末として、10月16日には独ミュンヘンで「HUAWEI Mate 10」を発表することを明らかにして講演を締めくくった。

改めてKirin 970

それを搭載した新端末のMate 10を10月16日に発表。これまでのスペックがまるごと搭載された端末になる見込みだ