消費電力(グラフ38~43)
さて、最後は恒例の消費電力であるが、Core Xのレビューについて、「AVX512を使わないとどうなのか?」というご指摘を頂いた。それはごもっともな指摘なので、今回はSandraのDhrystone/Whetstone(グラフ38)と3DMark Firestrike Demo(グラフ39)に加え、TMPGEncでHEVCのエンコード(グラフ40)と、DxO OpticsProで、α7R IIのRAW画像10枚の現像(プロファイルはDxO標準)(グラフ41)の2つも追加した。
ということで、まずグラフ38を見ると、Dhrystoneは相変わらずCore i9-7900Xがぶっちぎり、WhetstoneはThreadripperも同レベルまで達しているが、Core i9-7900XのTDPが140W、対してThreadripper2製品はTDP 180Wなのにもかかわらず、むしろThreadripperのほうが低い消費電力に収まっているのがちょっと面白い。
FireStrike Demo(グラフ39)で差は縮まるが、それでもCore i9-7900XよりもThreadripper 2製品のほうがやや低めの消費電力になっている。
TMPGEnc(グラフ40)も傾向は同じで、20~30WほどThreadripper 2製品が低めである。DxO(グラフ41)の方は、消費電力そのものはCore i9-7900Xが一番高いが、その分処理時間も一番短いわけで、単純に消費電力だけで見ると良し悪しの判断が難しい。
ここでいつものように平均を取ってみたのがグラフ42である。TMPGEncは開始後30秒ほど乱れるので、ここは抜いて30秒~2分までの90秒間の平均を取った。全体的に消費電力が高めなのがCore i9-7900Xなのは間違いなく、Threadripper 2製品は30Wほど低めの消費電力で推移しているのが分かる。
グラフ43はグラフ42の値から待機時の消費電力を引いた、実効消費電力差である。WhetstoneおよびFireStrikeだとCore i9-7900XとThreadripper 2製品の差はほとんど無いが、それ以外の整数演算ではやはり20~30WほどThreadripperの方が低めに推移している。
とりあえずDhrystone/Whetstoneについては、次回に持ち越しとして、ここではTMPGEncとDxOについて分析してみたい。まずTMPGEncの消費電力効率だが以下のように計算される。
製品名 | エンコード速度(fps) | 実効消費電力差(W) | 消費電力効率(mfps/W) |
---|---|---|---|
i9-7900X | 6.59 | 193.7 | 34.02 |
R7 1800X | 4.15 | 111.2 | 37.32 |
TR 1920X | 5.82 | 171.6 | 33.92 |
TR 1950X | 6.84 | 176.5 | 38.75 |
消費電力のmfps/Wは、1Wの消費電力でどの程度のエンコード速度が出せるかだが、実際には1fps/Wを遥かに下回っているので、1000倍した結果である(なのでミリfps:mfpsの表記となる)。
結果はかなり近いところにあり、実際Threadripper 1920XはCore i9-7900Xよりも下回るが、Ryzen 7 1800XやThreadripper 1950Xは、電力効率が良い結果になっている。
一方で、DoOについては消費電力と経過時間の積で、利用した電力量を計算すると以下のようになる。
製品名 | 実効消費電力差(W) | 所要時間(sec) | 利用電力積算量(W・sec) |
---|---|---|---|
i9-7900X | 169.1 | 66 | 11160.6 |
R7 1800X | 92.3 | 94 | 8676.2 |
TR 1920X | 125.7 | 80 | 10056.0 |
TR 1950X | 143.8 | 73 | 10497.4 |
これも僅差であるがCore i9-7900Xが「10枚のRAW画像の現像に必要とする積算電力量が一番多い」ということになった。一番少ないのがRyzen 7 1800Xというのがなんともはや、という感じであるが、Threadripper 2製品もそう悪くない数字である。