ここ数年、飲食店で頻繁に見かけるのが「男梅サワー」。「梅酒サワー」ではなく「男梅サワー」だ。そもそも梅酒といえば、独特な甘味と爽やかな味わいが特徴で、どちらかというと女性に人気のお酒というイメージがある。だが男梅サワーは消費者の7割を男性が占めているという。しかもアイデアのもととなったのは、製菓メーカー、ノーベル製菓の“キャンデー”だ。ますます男性からは程遠く思える商品の開発経緯などを、サッポロビール株式会社スピリッツ事業部の伊藤寿俊さんに話を聞いた。

“しょっぱい旨さ”が人気! 男梅サワー誕生の舞台裏

男梅サワーは、2013年4月にサッポロビールから限定発売されたアルコール飲料。ノーベル製菓の人気商品「男梅キャンデー」独特の風味が忠実に活かされている。

「きっかけは、社員のひとりが男梅キャンデーを舐めていて『こんなお酒があってもいいのでは』と思いついたことでした。それまで梅酒風味の缶チューハイはあったものの、梅干風味のお酒はありませんでした。そして梅のお酒というと、“甘い”という印象が強く男性としてはあまり手を出しにくい商品。そこで我々は男性でも飲みやすい“甘くない”梅干しサワーを作ろうと考えたんです」

こうして男梅キャンデーのノーベル製菓に提案を持ちかけ、男梅サワーの開発がスタート。開発中は常に男梅キャンデーを舐めながら(!)試作が行われた。

「他社の商品は、青梅を使ったフレーバーのお酒が多い。僕らはキャンデーの甘さも出しつつ、昔ながらの“塩で漬け込んだ梅干し”の感じを目指しました。ただ塩を使うと缶の裏側が腐食してしまう。塩を使わずにどう“しょっぱい旨さ”を実現するか、開発に苦心しました」(伊藤さん)

こうして試作を重ねて完成した男梅サワー。当初は数量限定商品だったが、反響が大きかったためその年のうちに通年商品として復活。2016年の売上げは過去最高を記録し、今や男梅サワーは同社低アルコール缶飲料部門で出荷量の半分を占める看板商品となったそう。

「その後、飲食店さんでも楽しんでもらえるよう2014年春にグループ会社のポッカサッポロ社から割り材の『男梅シロップ』を、同年夏『サッポロ 男梅の酒』というRTS(リキュール)を作りました。男梅の酒は、自宅でもアルコール度数をアレンジできます。また『男梅サワー』のアルコール度数5%だと物足りないという御意見も反映して9%の『超男梅サワー』という商品をラインナップに加えました。」(伊藤さん)