結論から言うと、その「何か」を見いだせていないから、iPadが売れる環境を作るに至っていない。

またこの視点から考えても、3月21日にリリースした第5世代iPadが、iPadの現状を大きく変える要因を持っているとは言えないのだ。ただ前述の通り、需要に応え切れていなかった部分に対応するという面では、第5世代iPadによる販売の上昇は、一定の成果を上げると期待できる。しかしiPadの状況を変えることではない。

9.7インチのiPad Pro

iPad Pro 9.7インチモデルについては、2016年3月の発表時、PCの買替え需要を狙うというコメントがあった。

しかし前述の通り、そのPC市場自体が、より廉価でGoogleのサービスを前提としたChromebookや、Microsoftが主導するデタッチャブルなどの新しいスタイルのPCが台頭し、Appleが想定するPC市場と現在のトレンドには乖離がある。

また、PCとMacを比較したときに、決定的に異なっている点が「ゲーム」だ。PC市場では、ハイエンドマシンのカテゴリとして「ゲーミングPC」というジャンルが確立されている。昨今、そのゲーミングPCはデスクトップからノート型へと推移している。

ゲーミングPCは、高度なグラフィックスやを駆使するゲームや拡張現実(VR)を快適に動作させることができるコンピュータ、と解釈すれば良いだろう。高速なCPU、より高速なグラフィックス、十分なメモリ、反応の良い高解像度ディスプレイを備え、グラフィックスなどは外部拡張などにも対応する。人によっては、薄型テレビに匹敵する30~40型のディスプレイに接続して使っているようだ。

ゲーミングPCを選べば、ちょっとやそっとの重たい処理がある仕事にも十分対応できるわけで、カテゴリとしてだけでなく、性能基準としても機能する言葉となった。