有機ELの歩留まりを向上させるために

TFT素子の小型、高密度化が進むと、従来技術をそのまま当てはめた場合、欠陥の数も増加していき、歩留まりの低下を引き起こすこととなる。そのためには、欠陥検査や欠陥レビュー、欠陥分類など、欠陥の中身を知り、対処していく必要があるが、従来のディスプレイ検査は、ガラス基板を砕いて光学系を用いて調査を行う「破壊プロセス」が必要であり、サンプル数が限定されたり、余計な工程を入れる必要があり、インラインでの対応が難しかった。

AMATでは、半導体プロセスで培った欠陥関連ノウハウを投入したインラインSEMを用いた電子ビームレビュー機(EBR)を開発し、こうした欠陥検査の作業そのものを変えようとしている。「EBRは半導体で培った歩留まり向上策をディスプレイでも提供することを目的に開発されたもの。半導体もプロセスの微細化に伴い、90年代に光学検査からSEMへと置き換わったが、ディスプレイ分野でも、同様のことが起こりつつあり、新たな革新技術が必要と判断した」という。

EBRは、半導体製造の技術をディスプレイ分野に持ち込むのみならず、使われ方そのものを持ち込んだものとなっている。そのため、パーティクルのレビューなどを自動的に実施したり、組成分析やCD計測なども自動でできるため、さまざまなプロセスにおける欠陥の検査を可能とし、しかもインラインでの検査が可能であり、1時間あたり100点程度のサンプリングを、層別に非破壊で調べ、重篤な欠陥がどこにあるのか、といった全体像を見ることも容易に行えるようになるという。

EBRはLTPSで求められるナノオーダーの解像度を実現しており、非破壊でさまざまな欠陥を検査することを可能とする

「有機ELは設計が複雑化しており、より高精細化が求められている中においては、こうした取り組みが必要となる。EBRであれば、解像度も5nm程度と、LTPSの結晶サイズをきめ細かく制御することが可能であり、歩留まりの向上が可能になる」と同社ではEBRがこれからの有機EL製造において必須になる技術になると強調する。

広がるフレキシブルな製品

半導体やFPDに括らずフレキシブルな製品、という見方をすると、酸化アルミを蒸着させ、食品を保護するパッケージや、機能性フィルムのタッチパネルや窓ガラスへの適用などが現在、市場として存在しているが、将来を考えた場合、フレキシブルディスプレイや薄膜電池、メーターやセンサ機能を有したインテリジェントパッケージといった市場の成長が期待されている。

フレキシブルな製品の市場例。上段が現在のアプリケーション。下段が将来のアプリケーション

AMATでも酸化アルミを蒸着させる熱蒸着装置や電子ビーム(EB)蒸着装置、スパッタリング、CVDなどを提供してきたほか、近年では「誘導加熱方式を用いた蒸着装置」の活用を提案しているという。

なお、同社では、「今後、有機ELの時代が到来することは間違いないと思っている。それに対して、AMATはさまざまな技術を提供することで対応を図っている。今後、よりフレキシブルになっていく流れの中で、大面積の加工が可能なロール・ツー・ロール技術は有望になってくる。こうした将来の真の意味でのフレキシブルな有機ELの時代に向けて、すべての工程に成膜技術と検査・分析技術を提供していくことで、カスタマの力になっていきたい。液晶パネルのときもAMATはCVDのリーディングカンパニーであったが、フレキシブル有機ELの場合であっても、そのポジションを変わらず確保していきたいと思っている」と、フレキシブル有機ELの時代が確実に来るとの見通しを示しており、折りたためる有機ELを実現する膜生成技術の確立など、今後、必要とされるニーズに対応する技術ならびに製造装置の開発を継続して行っていくつもりだとしている。