炭鉱から観光へ 映画を目玉の一つにしようとするも……

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭が立ち上がったのは1990年のことだ。

当時、石炭業が衰退する中、「炭鉱から観光へ」をスローガンに観光都市への大胆な変革へと大きく舵を切った夕張市。スキー場やホテル、温泉などのレジャー施設が整備される一方、炭鉱最盛期には17館もの映画館があった“映画の街”の伝統を受け継ぐべく、まちおこしの一環として故・中田鉄治前市長が発案したのが同映画祭だった。

2000年からは「ゆうばりキネマ街道事業」として、『ローマの休日』や『燃えよドラゴン』、『太陽がいっぱい』、『男はつらいよ』といった往年の名画の絵看板を市内の至るところに掲示。白銀の街に突如現れる昭和レトロな絵看板は、映画祭の観客を楽しませる絶好の撮影ポイントになっている。

都心ではなかなかお目にかかれない絵看板

だが2007年、夕張市に353億円もの財政赤字が発覚し、市は国内唯一の“財政再建団体”となってしまう。財政破綻の煽りを受け、映画祭も開催補助金の打ち切りが決定し、一時休止に追い込まれた。なお、同年は映画ファンや映画配給会社の協力により「ゆうばり応援映画祭」として開催されている。

破綻から10年、人口は1万人以下…財政再生計画見直しへ

翌2008年、運営を民間に移して映画祭が再スタート。ゆうばり市民会館がメイン会場となり(現在は閉館)、市民主導の映画祭は“ゆうばり再生”の象徴として話題となった。

そして再出発から10年目となる今年2017年。映画祭開催前の2月に、映画祭名誉会長も兼任する鈴木直道市長が、財政再生計画の抜本的な見直し案を市議会行政常任委員会に提示し、“地域再生”に向けて再スタートを切ることを発表した。

市の大きな変化が決まった直後の映画祭開催について、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭事務局長、千石慎弥さんは「夕張市の再スタートは、地方創成を政策とする国にとっても他の自治体にとっても重要なことだと思う」と語る。

「現在、軒並み人口が減っている自治体にとって、ここ10年の夕張の活動は、地域再生に向けた良いモデルケースになっていると思っています。夕張が奮起すれば全国の方々の希望になる」(千石さん)

そう、夕張市最大の課題は人口流出だ。現在、市の人口は1万人を割り込んでおり、子育て支援や若者の定住を促す施策など、新規事業が検討されている。

こういった次世代への投資については、実は、映画祭周辺でも動きがあったのだ。