「ZenFone 5」での日本向けローカライズで人気を獲得

その理由は、日本のスマートフォン市場へ本格参入するに当たり、最初に投入した「ZenFone 5」にあるといっても過言ではない。ZenFone 5自体は台湾をはじめ世界的に展開していたモデルだが、それを日本市場に投入するにあたって、エイスースは独自のカスタマイズをいくつか加え、高い評価を得たのである。

その1つは周波数帯だ。SIMフリースマートフォンはMVNOのSIMを挿入して利用されることが多く、MVNOの多くはNTTドコモの回線を借りている。そしてZenFone 5は、NTTドコモが使用している周波数帯の1つである800MHz帯(バンド6/バンド19)に対応していたのだ。

NTTドコモはこの帯域を、主に地方や山間部を広くカバーするのに用いている。だがこの帯域は日本以外ではあまり使われていないことから、海外製のスマートフォンの大半は、当時この帯域に対応していなかった。

実際、SIMフリー市場に先に参入していたファーウェイなど多くのメーカーは、2015年半ばまではバンド6/バンド19に非対応の端末しか投入しておらず、地方に持っていくと快適に利用できなくなってしまうという理由から、評判を落としていたのだ。

だがZenFone 5は、最初からバンド6/バンド19への対応を打ち出したことで、SIMフリースマートフォンの中でも「日本全国で安心して使える」という安心感をもたらし、ユーザーだけでなくそれを販売するMVNOなどからも高い評価を得ることができた。周波数帯で日本を重視する姿勢を見せたことが、ZenFone 5、ひいてはその後のエイスース製端末の評価に大きく影響したわけだ。

エイスースが日本市場への本格進出に当たり、最初に投入した「ZenFone 5」。NTTドコモの800MHz帯に対応したことが高く評価され、多くのMVNOで取り扱われるなど人気となった

さらにもう1つ、日本で利用する上で必須の日本語入力に関しても、ZenFone 5は日本で高い実績を持つジャストシステムの「ATOK」を採用したのである。端末自体はグローバルモデルそのままながら、それまでSIMフリー市場では軽視されていた、日本向けのローカライズ対応を徹底したたことが、スマートフォンメーカーとしてASUSの人気を高める大きな要因となったことは確かだろう。