ロボットによる船外活動を現実にする「GITAI」

SLUSH Tokyo賞&Tech in Asia賞を受けたMacroSpaceの「GITAI」は、ロボットが得た触覚を同期させる特殊なグローブを用意して、遠隔作業の可能性を追求するソリューションだ。

例えば遠隔操作するロボットが何かに触れた場合、その感触をグローブにフィードバックし、数値に基づいてグローブの収縮などで人間に伝えるという。担当者は「インターネット回線経由で『瞬間移動』ができる。人的リソースを安全に移動させるには、その身体を増やせばよい」と語る。つまり、物理的に身体を増やすのではなく、制御可能なロボットのフィードバック情報を取得すればよいという発想だ。

MacroSpace「GITAI」の動作ムービー。ロボットの動作とヘッドマウントディスプレイ内の映像がリンクしている

少々分かりにくいが左上の枠内は操作する人間。右上の枠内は連動するロボット。そして全体ではロボットからの視点が映し出されている

技術的にも興味深い。WebRTCやWebSockなど汎用的なプロトコルは五感の同期に最適ではないとの理由からUDPベースの独自実装を行った。さらにリアルタイム性を最優先させるため、人間-ロボット間のデータ通信はP2Pストリーミングで構築し、パケットロスは機械学習で補完する。また、アイトラッキング技術を用い、視野の中心以外の解像度を落としデータの最適化を図る試みも実験中という。

担当者はビジネス展開として、大型建造物の点検作業や宇宙での船外活動など人間に危険が伴う作業の代替を目指す。なお、担当者は日本人初となるシンギュラリティ大学のGlobal Solution Programへ参加が決まっており、「(シンギュラリティ大学はシリコンバレーのNASA基地内にあるため)渡米した時はNASAの方々にヒアリングしたい」と述べていた。

「GITAI」の概念。人とロボットの連携はソフトウェアで実装し、ハード&ソフトすべて手作りで行っている

SLUSH Tokyo賞&Tech in Asia賞を受けたMacroSpace

65,536人分の"踊ってみた"を実現「Swipe Video」

弥生賞を受けたAMATELUS「Swipe Video」は、バレットタイム撮影を応用し、被写体が中心になる動画を作成できるソリューション。

一般的な360度撮影は撮影者が軸に映像を作成し、スワイプ操作で視点が変わるものの、Swipe Videoは複数のスマートフォンやデジタルカメラで撮影して、被写体を中心に視点が変わる動画を作成できる。類似するサービスとしてYahoo! JAPANの「擬似3D画像」が存在するものの、AMATELUSのプレゼンテーションでは「擬似3D画像は3.2MB/秒、Swipe Videoは0.4MB/秒。解像度3倍以上でデータ量は8分の1」と独自開発したストリーミング配信手法をアピールした。

プレゼンテーションでは美容師の練習風景を映したサンプル動画を紹介。マネキンを中心に360度の視点から確認できる

もう1つのアプローチとして、"逃げ恥ダンス"のように、多数のユーザーが同じダンスを踊る動画にも利用できる。前述した独自技術で最大65,536人分の投稿に対応し、スワイプでユーザーが切り替わる"踊ってみた動画"の作成が可能だ。

スマートフォンからLINEボットに動画を投稿すると、Microsoft Azure上で動画を追加し、結果をURLとしてLINEボットに投稿する。この流れで1つのコンテンツをみんなで作ることが可能になるという。実際に使ってみたくなるものの、Swipe Videoはクラウドサーバーの従量課金や電波環境の悪い展示ブースなどに向けたローカル配信システムで、法人向けサービスとして販売するという。角川アスキー総合研究所と連携した自社クラウド組み込みライセンス販売で収益化を目指す。

65536人分の"踊ってみた"動画が可能になるAMATELUSの「Swipe Video」

弥生賞を受けたAMATELUS

VR&AR活用の新医療ヘルスケアサービス「HoloEyes VR」

Orange Gab賞及びSupernova賞、そして優秀賞に輝いたのはHoloEyesの「HoloEyes VR」は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)医療関係者同士のコミュニケーション&データ提供を行う医療ヘルスケアサービスソリューションである。

一般的な医療の現場では人間という立体構造(3D)を医療機器で撮影(2D)し、それ見た医者が脳内で3D化というプロセスを経ているが、ならば最初から3DのVRマップ化すればよい、という発想から成り立っている。

人体の中身を3Dマップ化し、VRとして参照できる「HoloEyes VR」

墨東病院で行われた実験風景。VR空間内にマーカーを加えるなど、医療関係者同士で視覚的イメージを共有できる

3DデータはMicrosoft Azure上に蓄積し、スマートフォンなどからもアクセス可能。Microsoft HoloLensで3Dデータも確認できるため、さまざまな利活用が期待できる。HoloLensでは本ソリューションで手術経験のデジタル化や、3Dデータのライブラリー化を目指すものの、運営方法としては、病院ごとの3Dデータ参照を有料とするプライベートデータと、患者からの同意を得て広めることに価値がある症例などを無償公開するパブリックデータと、2つのアプローチを用意した。その場合CTスキャンがない国でも症例の参照が可能になるという。

Microsoft HoloLensから臓器の3Dデータにアクセスした状態。QRコードを使ってスマートフォンからも参照できる

優秀賞などに輝いたHoloEyes。受賞者は「最高に嬉しい。妻と結婚したことよりも嬉しい」と感想を述べていた