人の動きを再現する人工筋肉スーツ「WIM Studio」

そして、TECH LAB PAAK賞及び最優秀賞+日本航空アントレプレナー賞に輝いたのは、WIM Studioの「WIM suits」。

特殊合金からなる繊維状の人工筋肉を収縮させることで着衣者に動きを、胸部の前後埋め込まれた4つずつの振動子を用いることで胸部の動きを伝達することで、身体の動作情報を直接共有するスーツである。人工筋肉をベースにしているため、衣類のように日常的に利用することが可能だ。

本製品の開発に至ったのは、米国でフィジオセラピーを受けているメンバーの負担を材料や医療工学、そして技術の力で解決できないか、という発想から始まっている。

WIM Studioの「WIM suits」

腕や胸部などに振動子を埋め込んで、上半身の動きを再現。現在はゴルフのスイングなどは再現できないものの、センサーの追加で対応可能になるという

直近の実験では、Microsoft Kinect 2で初期動作の3Dモーションデータを取得し、データベースの内容をスーツにダウンロードすることで、リハビリテーションやスポーツトレーニング、高齢者の動作補助などさまざまな場面に利活用できるという。

さらに興味深いのがダンス練習への応用。一般的にダンスは声と鏡という原始的手法で習得しているが、本製品を使えば筋肉の動きを補助できるため、新たな習得システムの構築も可能になりそうだ。現時点では未実装だが、将来的には屈曲センサーをスーツに組み込むことで、スーツ単独の3Dモーションデータ取得を目指す。さらにスーツから運動データの自動アップロードというコンセプトもあるという。

3Dモーションデータの取得はMicrosoft Kinect 2を使用。将来的にはスーツ単独で取得可能になる予定だ

最優秀賞などに輝いたWIM Studio。今後は異分野の協業しながら技術とデザインの両面から価値提供を目指す

テクノロジーは人と寄り添う存在に

今年も数多くのスタートアップ企業がInnovation Awardにチャレンジし、興味深いアイディアを元にしたソリューションが披露された。思い出すのが昨年開催のInnovation Award 2016最優秀賞に輝いた筑波大学 人工知能研究室の「bioSync」。他者と神経を接続して両者の運動感覚を共有するウェアラブルデバイスだが、Imagine Cup 2017の優秀賞に輝いた「Walky」「NeuroVoice」と共に、人間に対するアプローチが高く評価される傾向にある。この流れが裏付けるのはITテクノロジーが単なる計算機から、人と寄り添う存在になりつつあるということだ。今から来年のInnovation Day 2017が待ち遠しい。

阿久津良和(Cactus)