―― 経営の観点から見ると、2017年は、ソニーにとってどんな1年になるか。
平井氏「2017年4月から始まる1年間は、チーム平井になってから、2度目の中期計画の最終年度になる。営業利益5,000億円、ROE10%が最終年度の計画であるが、市場の不安定な環境や、熊本震災の影響もある。しかし、掲げた目標についてはやらなくてはならない。それに向かって、チーム一丸となってやっていくことを新たに決意した。コミットしたことをやっていきたい。
営業利益5,000億円達成に向けた大きな原動力は、エレクトロニクス事業である。各事業部や分社化した子会社の商品が強くなってきたこと、テレビも250億円を超える利益を出してきたことなどもプラス要素であり、エレクトロニクス事業をさらに強化したい。
コンシューマエレクトロニクスは苦戦が続いた時期があった。しかし、BRAVIA、α、サイバーショット、ウォークマン、プレイステーションなど、ソニーブランドのコンシューマエレクトロクス商品において、イノベーションを徹底的に追求した商品を出し続けることで、再びお客様に、ソニーの商品にソニーらしさを感じてもらえるようになってきた。現在、これらの事業がソニーグループの収益を大きく改善する基盤になるところまで回復している。
社長就任以来、コンシューマエレクトロニクス領域の復活は、『商品力の強化』と『差異化が不可欠』と言い続けてきた。高度にネットワーク化された時代には、ハードウェアはコモディティ化し、付加価値はすべてクラウドやサービス側に移ってしまうという意見もある。しかし私は、ハードウェアに求められる機能は変わったとしても、お客様との接点であるハードウェアの存在意義は変わらないと考えている。
お客様にもっとも近いところを『ラスト・ワン・インチ』と呼んでいるが、この部分でお客様の感性に訴える商品を開発し、それを世界中に届けたい。ソニーは、それをできる力を持っており、ここにソニーの強みがある。ハードウェアは、イノベーションの余地が残っていないとの指摘もあるが、最近のソニーの商品を見てもらいたい。伝統的なエレクトロニクス領域においても、まだまだイノベーションを起こし、お客様に感動してもらえる可能性があると明確に感じてもらえるだろう。
また、プレイステーション4の累計出荷が5,300万台に達し、これをベースにして展開しているプレイステーションネットワークによるネットワークビジネスが、収益に貢献することを期待している。そして、ここ1年半にわたって陰りがあった半導体ビジネスも、収益に貢献してくるだろう。これらにより、5,000億円の営業利益達成に向けて、力強く進んで結果を出していきたい。2017年度は『総括』の年になる。ソニーは、コンシューマエレクトロニクスの領域に正面から取り組んでいることも理解していただきたい」