Snapdragonが「フルWindows」に対応、その意味は?

クアルコムのSnapdragonは、日本の大手キャリアスマホのほとんどが採用するなど、スマホ向けとして定評がある。インテルの「x86」ではなく、ソフトバンクが買収したことでも話題になった英「ARM」社のアーキテクチャを採用しているのが特徴だ。

だが、インテル以外のCPUでWindowsを動作させるとき、問題になるのがこのアーキテクチャの違いだ。Windowsのデスクトップアプリはインテル向けに作られており、そのままではSnapdragonでは動作しない。2012年にはARM向けのWindowsとして「Windows RT」も登場したが、マイクロソフトの方針もあり、Officeなど標準搭載以外のデスクトップアプリは使えないという制限があった。

日本で最初に発売されたSurfaceシリーズもWindows RT搭載機だった

その代わり、マイクロソフトはタブレットなどで操作しやすい新たなアプリプラットフォームも提供してきた。だが、ビジネスの現場では従来型のデスクトップアプリの需要が高いのが実情だ。そこでインテルCPU相当の動作を実現するエミュレーションにより、Snapdragonでデスクトップアプリを含めた「フルWindows」を動かせるようにする、というのが今回の発表の見どころだ。

一般的なPCと同じWindows 10が、Snapdragon上で動作している(マイクロソフトが公開したYouTube動画)

確かにCPUのエミュレーションには、動作速度が遅くなるなどの懸念はある。そのため、ただちにインテルのCPUが不要になるというわけではない。デスクトップPCや高性能なノートPCなどでは、当面インテルの優位性が揺らぐことはないだろう。

だが、Windows PCでもスマホやタブレットのようにLTE通信を使いたい、という需要は高まっている。かつてデータ通信のために回線契約を追加するのはコスト的な負担も大きかったが、いまや日本でも格安SIMが普及し、気軽に購入できる時代になっている。

そこでLTE通信に強いSnapdragonがWindows 10をサポートしたことで、フルWindowsが動くスマートフォンや、LTEにつながる軽量ノートPCなど、モバイル分野でのWindowsデバイスが急激に拡大する可能性が見えてきた。実際の製品が登場するという2017年後半が待ち遠しい展開だ。