ホームシアター製品も登場。Dolby Atmosに初めて対応

今年のCESは、ハイレゾ対応のヘッドホンやスピーカーなどポータブルオーディオ機器が若干少なかったようにも思う。それもそのはず、2016年秋に開催された「IFA2016」でフラッグシップのウォークマンや、ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン「MDR-1000X」など沢山のハイレゾ対応製品を一斉に発表、その後発売してしまったのだから無理もない。

ドルビーアトモスに対応するシアターバー「HT-ST5000」

そのかわりというわけではないが、今回シアター関連の出物が充実している。「HT-ST5000」は、シングルボディのサウンドバーとサブウーファーを組合わせた「7.1.2ch対応」のシアターシステムだ。コンマが二つも並ぶのは、Dolbyが提案するオブジェクトベースの立体音響技術「Dolby Atmos」に対応し、臨場感溢れるサラウンドサウンドが楽しめるからだ。サウンドバーの両側面端には、サラウンド効果音を天井に反射させ、音が振ってくるような臨場感を再現するイネーブルドスピーカーのユニットをしっかり配置。なお、ソニーがDolby Atmos対応のシアターシステムを発表するのはこれが初めてになる。

こちらもDolby Atmosに対応するAVサラウンドアンプ「STR-DN1080」

AVサラウンドアンプ「STR-DN1080」も、ハイレゾ再生とDolby Atmos対応を実現した5.1.2ch対応の新製品だ。特徴はファントム (擬似的にスピーカーのないところに音像をつくり出す技術)でサラウンドバックの音声が再生できるところ。本機はDTSの立体音響技術「DTS:X」もサポートしているところが特徴だ。

短焦点プロジェクターが切り開く、まったく新しいスタイルのホームシアター

自宅にホームシアターを導入したかったが、プロジェクターを置くスペースが確保できず、泣く泣く断念した人も少なからずいるだろう。ソニーは、4K HDRの高画質映像を、幕面より比較的短い距離から投写できる「短焦点プロジェクター」の新製品を2種類、今回のCESに用意した。

4K HDR対応のプロジェクター「VPL-VZ1000ES」

一つが、レーザー光源とソニー独自の透過型液晶デバイス「SXRD」を採用したプロジェクター「VPL-VZ1000ES」だ。白い壁面も含めて、幕となる面から約16cmの距離を確保するだけで、100インチのスクリーンを再現できるという。本体色はブラックに統一しており、部屋を暗くすればその存在感を消して、画面にも映り込まないよう工夫を凝らしている。米国での発売は2017年春を予定しており、価格は2,500ドル前後と予想されている。

Life Space UXシリーズのプロジェクター。「新4Kプロジェクター~It's all here~」がコンセプト

もう一つのプロジェクターは、ユーザーが暮らす空間をクリエイティブな映像や音を楽しむ場所に変える「Life Space UX」シリーズのコンセプトモデルだ。本機は製品としての開発がまだ決まっていないものであることをお断りしておこう。

コンセプトは「新4Kプロジェクター~It's all here~」。テレビラックのようなデザインの本体に、4K短焦点プロジェクターが組み込まれている。映像を映すことに限っていえば、先述したVPL-VZ1000ESとコンセプトは似ているが、デザインやマルチコンテンツ対応の点で毛色の異なる製品に仕上げていく考えなのだという。

完全ワイヤレスイヤホンの試作機も出展

2016年末にアップルが「AirPods」を発売して以来、左右の本体を完全に独立させた、いわゆる「完全ワイヤレスイヤホン」への注目度が急上昇している。ソニーが今からそこに手を付けるのは遅く感じるぐらいだが、ようやくコンセプトモデルが今年のCESに出展され一安心した。

完全ワイヤレスイヤホンの試作機も展示。ぜひ商品化してほしい

もっとも、CESの時点ではその仕様やコンセプトの多くがまだベールに包まれたまま。モックアップの展示はあったものの、ショーケースの中に入れられたままで、音を聴いたり触れることはできなかった。左右完全独立のイヤホンに充電器を兼ねたキャリングケースがセットになるオーソドックスなスタイルになりそうだ。このほかにも、ネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンもコンセプトモデルが出展されている。

ノイズキャンセリング機能を乗せたネックストラップタイプのイヤホンの試作機

この試作機は全てが謎というわけでもない。実は平井社長がカンファレンスのスピーチでこの2つの製品に触れていて、「ソニーが誇る、コンシューマー向けオーディオ製品のために培ってきたデジタルノイズキャンセリング機能が採用されることになるだろう」と述べている。

また、試作機が展示されているケースのすぐ隣には「MDR-1000X」の姿がある。完全ワイヤレス機は試作段階のものではあろうが、ブラックとベージュというMDR-1000Xのラインナップに敢えて合わせているように見える。h.earシリーズではなく、プレミアムグレードのイヤホンとしてソニーのラインナップに加わることになるのでは? という期待が膨らむ。近く正式なアナウンスがあることを望みたい。

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今年のCESでソニーが発表した製品は、それぞれにカテゴリーは違うが、プレミアムクオリティを追求した製品であるというところに共通点が見えてくる。ハイレゾや4K HDRが普及のステージに向かう段階で、安価でお手軽な方向に足を踏み入れず、グレードの高い製品を充実させていこうとするソニーの意気込みを感じて、筆者も頼もしく感じた次第だ。