一連の総務省の施策によって、スマートフォンの実質0円販売事実上禁止など、従来の商習慣が大きく覆された携帯大手3社。業績自体は好調を維持しているが、商習慣を変えて競争を促進したい総務省の施策は今後も続くと見られるため、先行きは不透明だ。2017年、大手3社はどのような施策をもって業績拡大を進めようとしているのだろうか。

総務省の影響を大きく受けた携帯大手3社の1年

携帯電話大手3社にとって、2016年は逆風が吹き荒れた年だったといえるだろう。その理由は、昨年総務省のICT安心・安全研究会が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」で、MVNOの競争力強化と携帯電話料金引き下げを実現するべく、3社が確立してきた携帯電話の販売手法や料金施策が、相次いで覆されたからだ。

中でも大きな影響を与えたのが、スマートフォンの実質0円販売を事実上禁止したこと。先のタスクフォースを受け、4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、それを根拠としてスマートフォンを実質0円など、極端に割り引く販売施策に対して相次いで行政指導を実施。その結果、従来当たり前のものとされてきたスマートフォンの実質0円販売はできなくなってしまったのだ。

総務省が大手3社にもたらした影響は他にもある。先のタスクフォースの取りまとめでは、通信量が少ないライトユーザー向けの料金プランが存在しないことや、番号ポータビリティで乗り換える人が端末割引で極度に優遇され、長期利用者に対する優遇施策に力が入れられていないことなども問題視されていた。

そうしたことから3社はライトユーザー向けとして、高速通信容量が1GBで、月額5000円前後の料金プランの提供を開始したほか、長期利用者に向けて料金面などでの優遇施策を打ち出していなかったKDDI(au)とソフトバンクが、ポイントによる長期利用者優遇施策を新たに実施。NTTドコモも長期利用者の優遇を強化するなどの対応に追われている。

従来長期利用者優遇に消極的だったauも、総務省指導の影響を受けてか、長期利用者優遇プログラムの「au STAR」を開始するに至っている

だが一連の施策をもってしてもなお、MVNOの競争力を高めて携帯電話料金を引き下げるには、不足があると総務省側は捉えているようだ。2016年10月より実施されていた「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、現状3万円を超える高価格モデルも割引で1万円程度の値付けがされていることから、低価格モデルとの差がつかないことを問題視。先のガイドラインの改定案には、同シリーズにおける2年前のモデルの下取り価格を下回らない価格で販売するよう求める記述がなされている。

10月より実施された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、端末購入補助のさらなる適正化などについて議論がなされた

2015年に義務化されたSIMロック解除に関しても、現状ロック解除できるまで6カ月かかるのは「長すぎる」との声が多く上がり、取りまとめでは2カ月に短縮すべきとされた。またNTTドコモ以外の端末が、同じ会社のネットワークを利用したMVNOのSIMを挿入しても、SIMロック解除していなければ利用できないことも、MVNOの競争拡大の観点から問題視。SIMロック解除をしていなくてもMVNOのSIMが利用できるようにすべきとの提言がなされている。