低価格サービスでは奪い合い競争が過熱化
2016年に展開した施策の多くは2017年にも引き継がれ、引き続き3社は1人当たりの売上を高める戦略を拡大するものと考えられる。
総務省はMVNOの利用拡大を進めていることから、MVNOなどより低価格のサービスへ既存ユーザーが流出することで、売り上げを落とすのではないかという懸念もあるが、1人当たりの売上拡大に戦略を切り替えたことで、大手3社は低価格を求めるユーザーを無理に自社のメインサービスに留めないよう方針をスイッチしたと見られる。低価格ユーザーに対しては、自社回線を利用したMVNOやサブブランドなどへあえて流出させることで、接続料などによって無理なく売上を得る方向へと、今後はシフトしていくものと見られる。
しかしながら、自社回線ではなく他社回線を用いたMVNOなどに流出してしまえば、収入の道が完全に断たれてしまう。それゆえ大手キャリアにとって、現在大きなテーマとなっているのは、いかに低価格を求めるユーザーに対し、自社回線を用いたサービスを利用してもらうかであろう。
そこで2017年は、大手3社が低価格向けサービスに対し、どのような施策をもって取り組んでいくかが、大きく注目されるポイントとなってくるだろう。中でも、低価格サービス戦略で大きく出遅れたKDDIは、2016年に傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」に大幅なテコ入れを実施したほか、12月にはMVNOとしても大手のビッグローブを買収。今後も有力MVNOの買収を拡大して仲間を増やしてくるようであれば、低価格サービスの台風の目として注目されることになるだろう。
またソフトバンクは、これまでMVNOには消極的で、現状サブブランドのワイモバイルに力を入れている。だが一連の総務省施策などによって、同社のMVNOとなる企業が2017年以降、徐々に増えてくる可能性がある。
最も多くのiPhoneユーザーを抱えると見られるソフトバンクにとって、MVNOが増えることは、高付加価値サービスの利用につなげやすいiPhoneユーザーの流出につながる可能性があるため痛しかゆしな部分もある。それだけに、同社がMVNOをどう活用していくかというのは、今後興味深いポイントとなってくるだろう。
付加価値を高める戦略がどれだけユーザーの支持を集めるか、そして低価格サービスで、自社回線を利用するユーザーをどれだけ確保できるか。この2つが、2017年における携帯3社の評価を分ける大きなポイントになるといえそうだ。