知る人ぞ知る賢いロボット掃除機「Botvac」

ネイトロボティクスは、シリコンバレーのスタンフォード大学の起業家支援プログラムによって2005年に設立された会社だ。2010年に初のロボット掃除機を発売し、現在は北米のロボット掃除機市場で第2位のシェアを獲得している。

ネイトロボティクスのロボット掃除機「Botvacシリーズ」が他社と違うのは、独自の「Dシェイプデザイン」を採用していること。部屋の端や隅にフィットして、しっかり掃除ができる。また、人工知能「SLAM」を搭載し、レーザーセンサーで周囲360度を1秒間に1,800回測定。部屋の形や家具のレイアウトを確認しながら、最適なルートで効率的に掃除する。ランダムに動くタイプのロボット掃除機と比較すると、掃除時間はわずか1/4程度で済む。テレビCMなどの派手な広告活動は行っていないものの、じわじわと口コミで評判が広がっており、「知る人ぞ知る」ロボット掃除機として高い評価を得ている。

新製品の「Botvac Connected」。Wi-Fi機能を内蔵し、ネットにつながる。市場価格は税別92,500円前後

そして2016年11月、新製品「Botvac Connected (ボットバック コネクティッド)」を発表。今回、Botvac Connectedの特徴や今後の展望について、米ネイトロボティクスでアメリカ・アジアパシフィック担当副社長を務めるアレン・ホリングスヘッド氏と、ネイトロボティクス日本法人 代表取締役の竹田芳浩氏に話を伺った。

インターネットに接続してさらに便利に

2014年10月から、日本でもBotvacシリーズの販売が開始された。北米では第2位というシェアを誇っているが、ここまで日本のユーザーはどのような反応を示しているのだろうか。

「日本のユーザーは高いテクノロジーの製品を好むので、我々のBotvacは受け入れられているという印象を持っています。購入後のレビューも非常によいコメントが多く、満足度についても高い評価を得ています。当初予想していた目標を上回る結果に手ごたえを感じています」とホリングスヘッド氏は語る。

米国本社でアメリカ・アジアパシフィックにおけるビジネスを統括するアレン ホリングスヘッド氏(右)

レーザーセンサーで瞬時に周囲を測定して、人工知能「SLAM」が効率的な掃除ルートを決定する

ここ数年、ロボット掃除機は高価格帯と低価格帯の製品に分かれはじめ、高価格帯のロボット掃除機はより高機能に、低価格帯のロボット掃除機は機能を絞る、といった具合に棲み分けが進んでいる。高価格帯のロボットクリーナーは、掃除性能やセンサー、ナビゲーション形式などの機能など、高い基本性能はもちろん、さらなる機能に期待が集まる。

そんな中、登場した新モデル・Botvac Connectedの大きな特徴は、IoT化によってスマートフォンやタブレットと連携し、より使いやすく進化している点だ。家庭内のWi-Fiネットワークに組み込めば、スマートフォンから本体のオン/オフを指示できるのはもちろん、掃除開始時間の予約やスポット清掃、手動操作が行える。掃除した場所や過去21回の掃除履歴をスマートフォンで確認することもできる。

専用アプリを使ってスマートフォンやタブレットからさまざまな操作ができる

「今後はすべてインターネットに接続できる製品に変わっていくでしょう。スマートフォンでスケジュールを簡単に変更できるので、急に来客の予定が入っても外出先から対応できるようになります」(ホリングスヘッド氏)

ロボット掃除機がインターネットにつながることで、さまざまな可能性が広がる。ファームウェアのアップデートを行って動きをスマートに改善するのはもちろん、マッピングデータなどをクラウド上に蓄積し、動きに無駄をなくしていくことも可能になるという。インターネットによって便利になる機能は、今後増える予定はあるのだろうか。

「シリコンバレーの優秀なエンジニアが、インターネットと製品をつないでおもしろいことができないか、常に掘り下げて考えています。そういった新しい機能は、現時点では発表できませんが、もちろん追加していく予定です。イノベーションリーダーとして、ネイトロボティクスのロボット掃除機は今後も進化していきます」とホリングスヘッド氏は答えた。

スケジュールも設定できる。本体でも操作できるが、画面が大きいスマートフォンやタブレットのほうが設定しやすい

バッテリーがリチウムイオン電池になり、より長く掃除可能に

これまで、日本国内のロボット掃除機市場はアイロボット社の「ルンバ」がほとんどのシェアを占めてきたが、日本の狭い住宅事情にあわせて、小回りが効く国内メーカー製のロボットクリーナーの認知度が上がっている。

こうしたコンパクトなロボット掃除機と比較すると、ネイトのBotvacシリーズはボディが大きく見える。北米では第2位のシェアを獲得しているが、日本の住宅事情に合っているのか、ユーザーの反応なども含めて気になるところだ。

「Dシェイプの角があるぶん大きく見えますが、実際の横幅は32cmなので、それほど大きいわけではありません。ブラシの長さは27.8cmもあり、マッピング機能で効率よく短時間で掃除ができます」と日本法人の竹田氏は語る。

ブラシ幅が広く、一度に広い範囲を掃除できるのもポイント

このように「D」の直線部分が壁際まで寄る

Botvac Connectedではバッテリーをリチウムイオン電池にしたことで、より長い時間掃除できるようになった。音は大きめではあるが、「Eco」モードと「Turbo」モードが搭載され、Ecoモードでは音を抑えて120分、Turboモードでは60分から90分の掃除が可能となった。

インタビュー中にBotvac Connectedを使ってみたが、数分間掃除しただけでゴミがごっそり取れていた。編集部の会議室で、清掃業者が入っている、一見キレイなカーペットだ。掃除前に見ただけではわからなかったのだが、こんなにゴミが残っていたのかとゾッとしたほどだ。Botvacシリーズの掃除能力は非常に高く、ガラス製のおはじきも吸い込むほどの威力だという。ユーザーから高い評価を得ているというのも納得だ。

数分掃除しただけでこんなにごっそりゴミがとれた

さらに竹田氏は「壁からブラシで吸引できる距離はたったの1cmです。部屋の隅も、サイドブラシに頼ることなくしっかり吸い取れるので、壁際まできれいに掃除できます」と、Botvacシリーズの魅力について語った。

お手入れも簡単になった。新たに高性能フィルターを搭載した。0.3ミクロンの粒子も逃さないフィルターとなり、取り外しやすく、フィルター掃除が容易になった。以前はフィルターの溝に埃が入り込んでしまい、専用のブラシ等での掃除が必要だったが、スルッと取れるようになっている。ここが詰まると吸引力にも関係するので、地味だが大きな改善と言える。

細かいところを改良し、使いやすくしたBotvac Connected。本体やデザインに大きな変更はないが、インターネットに接続できることで、さらに操作もしやすくなっている。今後はスマートフォンで操作ができるだけでなく、もっとインターネットを活用し、より機能の幅を広げてほしい。ネイトらしい技術力で一歩先を行くロボットクリーナーを期待したい。

米国本社のアレン・ホリングスヘッド氏(右)と日本法人の竹田芳浩氏(左)。手にしているのは新製品のBotvac Connected