本日、8月11日は「山の日」。新たに制定された国民の祝日だ。Apple Store銀座では、それに先立ち、iPhoneで写真を撮る際のちょっとしたテクニックをまとめた写真集「LIFE and iPhone」のiBooksでの配信を記念し、作者である彦根明さんと彦根藍矢さんによる、山の日を前にした夏休みのiPhoneフォトグラフィーを楽しむヒントを学べるトークショー「iPhoneで楽しむフォトグラフィー」が開催された。

彦根藍矢さん(左)と明さん

当日は、石川県金沢市の映画館「シネモンド」の館主にして、こども映画教室の代表である、土肥悦子さんがモデレーターを務めた。

モデレーターの土肥悦子さん

「LIFE and iPhone」の版元はエクスナレッジ。建築方面の雑誌や書籍を手がけていることで有名だ。作者のひとり、彦根明さんは建築家。夫人のアンドレアさんと共同で彦根建築設計事務所を主宰する。もうひとりの作者である彦根藍矢さんは、明さんとアンドレアさんの実息で、現在はミュンヘン工科大学建築学科の学生とのことだ。フォトグラファーとしても活動しており、過去には月刊「フォトコン」(日本写真企画刊)で入賞、日本大学藝術学部奨励賞を受賞している。

iBooksでの発売に関して、作者の二人は、紙と全然違う、全部iPhoneで撮影し、元々iPhoneの画面を見て撮影しているので、iPhone/iPadでご覧いただくのは理にかなってると切り出した。

企画がスタートしたのは、明さんがiPhoneで撮った建築写真を沢山撮って並べていたところ、それらがどうにもつまらなく感じられる瞬間があったのだが、建築写真以外のスナップなどを見てみたら、そっちのほうが明らかに面白く、これらを一冊に纏めてみようという流れになったからだという。刊行に際しては、本稿で公表するわけにいかないのだが、実は業界的にはイレギュラーな手続きを踏んでいた。が、発売後は、各方面から高い評価を受け、iBooksでの販売、今回のイベントの開催という運びとなった。アップルの柔軟な応対と「鷹揚さ」が分かるユーモラスなエピソードも開陳され、会場の笑いを誘う。

iPhoneで上手に撮影ができるTIPSが満載

iPhoneはとにかく操作性を高く買っているそうだ。さらにiPhoneのカメラは液晶画面を見たままの絵が撮れる、機動性も高く、シャッターチャンスを逃さないと、さまざまなメリットを二人は指摘する。

トリミングを使ったテクニックを紹介

「LIFE and iPhone」では、iPhoneでの撮影テクニックを数多く取り上げているのだが、この日は、まず、トリミングの手法をピックアップ。被写体に寄って撮るほうがトリミングを多用するより解像度は稼げるのだが、あえて実行してしまうことで、新しい視点から思い出を切り取ることができるようになると、新鮮に感じられる利点を強調した。iPhoneの「写真」アプリでは、編集したい写真を選択し、右上の「編集」をタップすると、編集メニューが表示される。写真の一部を切り抜きたい時、また縦横や水平・垂直を修正したい場合は「×」の右隣にあるトリミング/角度調整ボタンを使えばOKだ。

ホーム画面の「設定」から「写真とカメラ」をタップ。下の方にある「グリッド」のボタンを押す

撮影の際、良い構図を作れるのもiPhoneの特長である。ホーム画面の「設定」から「写真とカメラ」をタップし、下の方にある「グリッド」のボタンを押すと撮影時にガイドが表示される。明さん、藍矢さんともに、まず撮ってみることが大事であるという考えで、沢山撮っているうちに構図のストーリー性も組みあがってくると意見する。自然界のフレームを利用して、手前に木々を奥に空に浮かぶ雲を配置するなど、写真に奥行きを持たせるテクニック、水平、垂直をあわせる方法などが紹介された。

露出を上手くコントロールするできると、このような表現が可能となる

続けて露出をコントロールする方法を解説。iPhoneのカメラは、まず、良い意味で明るく撮ろうとしてくれるのだが、そこを一手間かけると良い写真になると、実際にiPhoneを使って藍矢さんが説明してくれた。明るく撮ろうとするiPhoneを、露出を調整し意図的に暗くすることで、締りのある黒を表現できる。藍矢さんは会場の照明にiPhoneのカメラを向け、露出をコントロールするとどうなるのか実演してみせてくれた。

ピント調整の作例。ぼやっとした写真しか撮れない時は、iPhoneの故障を疑うのではなく、まず、カメラのレンズの汚れを拭き取ってみること、というアドバイスも

露出のコントロールと同じく重要なのはピントの調整だ。画面の手前と奥とで、ピントを合わせるポイントが異なると、写真の印象もかなり変わってくる。iPhoneでは、ピントを合わせたい場所を画面上でタップすると黄色い四角でフォーカスエリアが表示される。その右脇に露出(明るさ)をコントロールできるスライダーも現れるので、これらを組み合わせてピントと露出を調整するのだ。ここで藍矢さんはピント合わせの裏技を伝授。iPhoneのカメラレンズのすぐ前に指をあて、そこに自動でフォーカスを合わせさせる。その後、パッと指をどけると、また自動でフォーカスを画面の奥方向に合わせにいこうとするのだが、実際にピントが合うまでタイムラグが生じ、画面全体がボケた写真が撮れるのだ。一瞬をどう捉えるかというの状況にもiPhoneはすぐ対応してくれると二人はいう。ポケットにいつも入っていて、サッと取り出せ、何枚でも撮れるし連写もできる。フィルムカメラの時代は、あと何枚残ってるかを気にしながら撮影していて、我慢している間にシャッターチャンスを逃すこともままあったと、明さんは当時を述懐した。

「LIFE and iPhone」の表紙にもなった作品。Facebookで投票を実施し、人気が最も高かったこの作品を表紙にもってきたとのこと

ここで、土肥さんから「LIFE and iPhone」の評価として、見ていて楽しいのというのがまずあった上で、見ている自分でもこういう写真が撮れるんじゃないかと思わせつつ、多分、そうじゃないというところがあると思う、テクニックに関する記述も沢山あるが、ポイントは「観察眼」にあるのではないかというコメントが飛び出した。

これについて、藍矢さんは、技術より、被写体を面白いと思える好奇心が大事で、その好奇心を引き出してくれるのがiPhoneであると返答。他の人が撮ったもので良いと思えた写真を真似するとまでは言わないまでも、そういう撮り方があったのかという気づきがあると広がりが出る、技術に関して言うと、知っていると知らないとでは、やはり撮れたものが変わってくると、明さんは続ける。

本作りを終わらせてくれたというマルセル・プルーストの言葉

さらに土肥さんが、映画監督の是枝裕和さんの「(映画において)カメラは世界を発見する道具である」という言葉を引き合いに出すと、明さんと藍矢さんは「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」マルセル・プルーストの名言を引用。「LIFE and iPhone」制作時にたまたま見つけたとのことだったが、このプルーストの言葉との出会いが、本作りを終わらせてくれたと振り返り、イベントを締めくくった。

アップルWebサイトのトップページ。山の日限定の模様

現在、アップルのWebサイトでは「iPhone 6sで撮影した新しい富嶽三十六景」という特設ページが公開されている。本日のみ、トップページでも大きくフィーチャーされる模様であるが、こちらもあわせてご覧頂きたい。

App Storeの特設ページ「山の日を満喫しよう

また、App Storeでは「山の日を満喫しよう」と題された特設ページがオープン。「自然を撮影」というコーナーでは各種カメラアプリを紹介している。アプリをダウンロードしたら、この夏休みはiPhoneを持って山に出かけようではないか。