事業家として非常に充実

決算説明会の最後には質疑応答の時間が設けられ、孫社長が回答した。この1カ月間の気持ちについて聞かれると「毎日がワクワクしており、寝る時間がもったいない。朝が来るのが待ち遠しい。いま事業家として非常に充実している。また新しい目標に挑戦できる。当分、社長業は辞められない」と笑顔になった。

質疑応答で記者団の質問に回答する孫社長

ARM買収のシナジーが見えない、との質問にはまず「シナジーが見える会社なら買えなかった。例えばAppleやGoogle、インテル、クアルコムなどは独占禁止法があるのでARMを買収できない。ソフトバンクにとってシナジーが直接的に見えない会社だから、無風状態で買いに行けた。例えば囲碁の名人戦では、自分の置いた石とはポーンと離れたところに次の石を打つ。先に打った石とのつながりがすぐには見えない。でも分かる人は、なるほどと感心する。持っている石のすぐ側に次の石を打つのは、小学生の囲碁」と説明。

その上で、「ソフトバンクにとってのシナジーをここで説明するわけにはいかない。他社との競争がある。リングに立つボクサーが、次は左のジャブを打ちますよとは宣言しない」として理解を求めた。

Y!mobileの合併を忘れちゃった?

国内の携帯通信事業について、Y!mobileの話題は聞くがソフトバンクモバイルの実態が見えにくくなっている、と指摘されると「基本的にY!mobileは、ソフトバンクグループの100%子会社で、完全にひとつのグループなんです」と回答。

これに慌てたのはソフトバンクグループ代表取締役 副社長の宮内謙氏で、「ブランドとしてソフトバンクモバイルとY!mobileがあるんです。もうY!mobileという会社は存在しません」と訂正した。

これには、孫社長も「合併したんだよな。すみません、このくらい国内の事業に疎くなっている。最近、(宮内氏に)任せて自分は離れているもので」と苦笑いするしかなかった。現在の孫社長の心の居場所が浮き彫りになった場面だったかもしれない。

ソフトバンクグループ代表取締役 副社長の宮内謙氏