説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『iPhoneの頭脳は「ARM」ですか?』という質問に答えます。

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「はい」とも「いいえ」とも答えられる質問ですね。確かに、iPhone 4以降のモデルにはAppleが開発した"頭脳"が搭載されていますが、その中核部分は英ARM社が設計しています。iPhone 4の「Apple A4」、iPhone 4Sの「Apple A5」、iPhone 5の「Apple A6」……現行モデルのiPhone 6s/6s Plusに搭載されている「Apple A9」も、やはりARM社の設計に基づいています。その意味では、答えは「はい」です。

ただし、「Apple A」シリーズはARM社の設計そのものではありません。スマートフォンやタブレットのように高い演算・描画性能を必要とするデバイスは、演算用のコアプロセッサ(CPU)にくわえて描画用のGPU、メモリなどをくわえた複層構造の「PoP(パッケージ・オン・パッケージ)」を搭載しており、ARM社の技術はその一部です。

実際、現在流通している9割以上のスマートフォンにはARMコアのPoPが採用されていますが、それはSnapDragon(クアルコム)であったりExynos(サムソン)であったり、ARMの表記はあるものの製造/販売する企業はさまざまです。ARMという企業は、PoPの中核をなすCPUやメモリコントローラといった回路の設計図(IPコア)を他社にライセンスすることを業としており、ライセンスを受けたメーカーはそこに独自技術をくわえることで独自のPoPを開発しているのです。

ところで、ARM社の設立にはAppleが大きく関与しています。かつて販売していた小型端末「Newton」には、ARM社の低消費電力技術が必要だったためですが、Newton事業の終息に伴い保有株式は売却され、その売却益はOS XやiPadなど新製品の開発に充当されました。ARM社の技術は、その後iPhoneやiPod、Apple WatchなどのApple製品を支えるわけですが、なんとも不思議な巡り合わせといえます。

4以降のiPhoneには、ARM社のIPコアを用いたPoPが採用されています