こうした取り組みは、ドコモが全国で実施しているものだが、関西では独自の対策も実施されている。台風による河川の氾濫などの被害が頻発しているうえ、今後発生が懸念されている南海トラフ巨大地震に備えたものとなっているのが特徴だ。

ドコモ関西による取り組み

南海トラフ地震向けには、2015年3月までに「中ゾーン基地局」を関西エリアの沿岸部に設置。地震とそれにともなう津波で沿岸部の基地局が壊滅した場合、大ゾーン基地局だけではカバーエリアが不足するため、通常利用されている基地局を強化することでエリアを確保することを目指している。

関西全域の沿岸部の基地局にさまざまな対策を実施。中ゾーン基地局は伝送路の二重化などの対策が施された通常の基地局

通常の基地局は、伝送路が光ファイバなどによる有線だが、断線に備えてマイクロ回線を使った無線設備も搭載することで伝送路を二重化。停電に備えて補助電源に燃料電池を採用し、3日間の通信時間を確保する。さらに、遠隔からアンテナのチルト操作を行い、1局でカバーできるエリアを拡大する仕組みも備える。普段は通常の基地局として使われながら、災害時にはエリアを確保する役割を担う。

関西全体では35局を中ゾーン基地局として強化しているが、この取り組みが全国に拡大され、2018年3月までに日本全体で1,200局以上を中ゾーン基地局として強化する方針だという。

台風などによる水害では、河川氾濫による基地局の水没、土砂災害による伝送路の断線、道路陥没による停電といった被害が想定される。これに対して、基地局の基盤を高くする、装置を鉄塔の上部に設置するなどのかさ上げ工事を実施。関西の31局で施工されているが、実際に2015年7月の台風11号では、3mのかさ上げを行った基地局の2m付近まで浸水。この対策のおかげで基地局の停止を免れたそうだ。

これまで関西地区で起きた河川氾濫被害。基地局も大きな被害を被った

水害に伴って基地局はさまざまな原因で被災する

過去の事例

かさ上げ対策

災害時に通信の確保が必要な各自治体の災害対策本部、電気・ガス・水道のライフライン、病院・警察・消防の公共施設に対しては、複数基地局でカバーする冗長化、中ゾーン基地局の設置、伝送路冗長化や電源確保、かさ上げなどの基盤強化を実施することで対応する準備を整える。2016年度中には対象となる関西地区2,037施設すべてで対策を完了する計画とのこと。

重要インフラでの通信の確保などの対策

可搬型衛星エントランスを増強

ほかにも自治体や海上保安本部、陸上自衛隊、NTT西日本との連携、復旧要員や復旧現場のリーダーとなる人材の育成といった対策を続けており、緊急時により早期の復旧が図れるよう、今後も継続的に取り組んでいく考えだ。

社外の組織との連携も強化

技術者の育成も重要