CMOSテクノロジの進歩に伴って画像均一性が絶えず改善されている一方で、最高レベルの性能を実現できるのは引き続きCCDイメージセンサです。これが両テクノロジのアーキテクチャから導き出された直接的な結論です。

CMOSデバイスは数千個の個別アンプ(各列に1個のアンプ、またはピクセルごとに1個のアンプ)を実装できますが、CCDは複数のピクセルからの電荷を1個の出力アンプに転送して、読み出し時にアンプ間の差異をなくすことができます。医療用および科学用画像処理、あるいは重要なライン最終工程での検査向けアプリケーションのように、高い画像均一性が極めて重要な場合は、これらのアプリケーションの定量的特性のため、クリーンな未処理画像を持つことが不可欠となります。さらに、高解像度画像や大きな光学フォーマットにスケーリングする際にこの均一性を維持するのは、一般にCMOSデバイスよりもCCDの方が容易です。

CCD設計のアナログ的な特性により、CCDカメラを所定の最終アプリケーション向けに「チューニング」し、それに合わせて特定の画像処理機能を最適化することもできます。例えば、天体写真撮影などのアプリケーションでは、カメラメーカーはアンチブルーミング機能(このアプリケーションにとってはそれほど重要でない可能性がある)を犠牲にして、センサの飽和電荷量の最適化(ダイナミックレンジの拡大)を選択することができます。ごくわずかな信号を検出するのに1時間あるいはそれ以上の露出時間が必要になる場合があるため、他の科学用画像処理アプリケーションでもCCDからの暗電流が微小である利点を活かすことができます。

ON SemiconductorのCCD「KAF16200」。16.2Mピクセルの解像度を提供し、天体写真撮影などに活用される (出所:ON Semiconductor)

このようにCCDにはアーキテクチャ上の優位性があるため、オン・セミコンダクターは現在CCDテクノロジとCCD製品への選択的投資を継続しています。最近発表された新しいCCDテクノロジ・プラットフォームは、その重要な例です。インターライン転送方式CCDの画像処理性能と、電子増倍(EMCCD)機能で達成可能な極端な弱光に対する感度を組み合わせたプラットフォームです。このインターライン転送方式とEMCCDの組み合わせにより、場面の一部(路地など)が非常に弱い光量レベル(月明かりや星明かりまでの低い照度)で照らされ、別の部分が明るい光(街灯)で照らされている場合でも1台のカメラで画像を撮影できます。1台のカメラで白昼から星明かりまで対応できるこの能力は、EMCCDの電荷増倍特性を活用するCCDテクノロジ特有のものです。この特性は電圧転送を基本動作とするCMOSデバイスでは機能しません。このテクノロジを採用した最初の半導体製品は、1080pの解像度を持ち最大30fpsで動作するデバイスで、監視、科学用画像処理、医療用画像処理など、微弱光アプリケーションを対象としています。

ON SemiconductorのCCD「KAI-08051」(左)と「KAI-08052」(右)。いずれも8Mピクセルの解像度を提供する。KAI-08052は発表されたばかりの製品 (出所:ON Semiconductor)

CCDテクノロジとCMOSテクノロジを比較するとき、どちらが優れているかを決めたい誘惑に駆られますが、これはどちらにとっても不適切です。各テクノロジは特有のものであり、エンドユーザーに固有の利点をもたらします。CMOSテクノロジを使用した製品は明らかに幅広く採用されるようになっていますが、CCDイメージセンサが引き続き優位性を維持している分野も存在しており、一部のアプリケーションにはCMOSデバイスよりもCCDの方が適しています。したがって、最高のテクノロジを見つけようとするより、検討中の具体的な最終用途にとって重要なパラメータが何なのかを見極め、それから必要なニーズをさまざまな製品から得られる機能や性能にマップさせる方が大切です。特定のケースでは、あるテクノロジをベースとする製品が最良の選択肢となるのに対し、状況によっては明確に判断できない場合もあります。そのため、偏見のない結論が得られるように、両方のテクノロジを提供している企業の製品を検討することが大切です。CCDおよびCMOSの両方のテクノロジをベースとする広範な製品ポートフォリオを参照すれば、最終顧客は所定の最終アプリケーションに最適なデバイス(これが本当の勝者)を特定し、選択することができます。

著者プロフィール

Michael De Luca(マイケル・デ・ルカ)

ON Semiconductor
イメージセンサ・グループ
インダストリアル & セキュリティ事業部
市場開拓担当マネージャ

デジタルイメージング製品とアプリケーションにおいて20年以上の経験を持ち、技術、販売、エンド・マーケットの広範囲な知識を有する。ニューヨーク州立大学バッファロー校で化学における理学士号を、またイェール大学で物理化学の博士号を取得。