2月4日に日本国内でも発売されたSurface Book。本誌でも既にレビュー記事が掲載されているが、筆者も実機に触れる機会を得たので所感を述べたい。

Surface Book

クリエイターをターゲットにしたSurface Book

日本マイクロソフトはSurfaceシリーズを日本市場に投入する際、「これさえあれば、何もいらない」というキャッチコピーを用いた。背景にはPC市場の低迷とタブレットの台頭があり、Surfaceシリーズは両者の利点を供える2-in-1 PCとしてデビューした。そのスタンスはSurface Bookでも変わらないと言う。

日本マイクロソフト関係者によれば、2015年6月にリリースした「Surface 3」は購入者の約3割が女性。発売当初は、医薬情報担当者など外勤のサラリーマンや学生層から支持された。2015年11月発売の「Surface Pro 4」は個人よりも業務利用のユーザーが多く、筆者も出先の原稿執筆マシンとして活用している。

だが今回、Surface Bookはこれまでとは違った市場を狙っている。2015年10月に開催した「Windows 10 Devices Event」ではデモンストレーションにCADアプリケーションを使うなど、プロクリエイターがターゲットであることは明確である。ちなみにキーボード側には、NVIDIAと共同開発したGeForce GPUを内蔵している。

「Windows 10 Devices Event」の様子。プロクリエイター向けツールを使ってSurface Bookのポテンシャルをアピールしていた

発売前の予約台数が多かったのはIntel Core i7と16GB メモリを搭載したハイエンドモデル(個人向けは税抜344,800円)。同社の狙い通り、CADアプリケーションの利用を目的とした建築関係者が多いそうで、前出の関係者は予想以上の引き合いに好感触を得ている様子だった。

コントラスト比 1,700対1のPixelSenseディスプレイを実際に目にすると、その表示に圧倒される

Surface BookのライバルはMacBook Pro?

ここからは、実機のキーボードの使用感について述べておこう。机上でキータイプすると、しっかりとした打鍵感を覚えた。感覚的にはSurface Pro 4タイプカバーの打鍵時に発生するクリック感を弱めた感じと述べると伝わりやすいだろうか。ノートPCライクな設計のため、このあたりはしっかりと作り込んだ印象を受ける。

おおむね問題はないSurface Bookのキーボードだが、膝上でキーをタイプするとディスプレイの動きがやや気になる。Surface BookはDynamic Fulcrum Hingeという特殊なヒンジを採用しているが、強度を高めたがゆえに、逆にセンシティブな反応を示すのかもしれない。

Surface BookのキーストロークはSurface Pro 4タイプカバーとほぼ同等。だが打鍵感は、Surface Bookが圧倒的に上回る

Surface Bookはオフィスや自宅の机上で、腰を据えて使用するデバイスと言えよう。以前からハイエンドノートPCは、デスクトップPCの代替として存在してきた。だが、筆者はSurface BookをデスクトップPCではなく、MacBook Proのライバルと見ている。

Windows 10 Devices Eventで、Microsoft Surface担当CVPのPanos Panay氏はSurface BookとMacBook Proを比較するプレゼンテーションを行った。さらに米国では、Surface Bookの発売に合わせて乗り換えキャンペーンを実施した。日本マイクロソフトは、米国と同じようなキャンペーンを行う予定はないとしているが、同様にライバル視している雰囲気は感じ取れる。

「Windows 10 Devices Event」でSurface BookとMacBook Proを比較するMicrosoftのPanos Panay氏

Microsoftが躍起になってMacBookシリーズと比較するのは、OS XやWindowsといったOSではなく、アプリケーションやWebサービスを利用する新たなユーザー層にアピールするためだ。さらに、打倒Macの道筋を作る意図もあるのだろう。こう考えれば米国本社の姿勢や日本の関係者の発言も合点がいく。

新たにPCを購入する際、ユーザーがMacBook ProとSurface Bookを見比べる。そのようなシチュエーションが発生し、その何割かがSurface Bookを選択すれば、Microsoftの戦略は一つ成功したと言えるだろう。

阿久津良和(Cactus)