2015年は前年比売上4,560億円の減、営業損益▲3400億・純損益▲5,500億の赤字予想

東芝は12月21日、2015年度通期の連結業績予想に関して、5,500億円の赤字になる見通しを発表した。同時に、PC、映像、白物家電を含む「ライフスタイル事業グループ」についての構造改革案を含む「新生東芝アクションプラン」の実施についても明らかにした。ここでは記者会見の内容を抜粋してお伝えする。

新生東芝アクションプランの概要を説明したのは、東芝 代表執行役社長の室町正志氏(写真左)。ライフスタイル事業グループの構造改革に関しては、東芝 代表執行役副社長の綱川智氏が説明(写真中央)。東芝 代表執行役上席常務の平田政善氏は、2015年度事業予想の詳細を述べた(写真右)

会見では社長の室町氏が「新生東芝アクションプラン」の概要について説明。ステークホルダーからの信頼回復と強じんな企業体質への改革のために構造改革、内部管理体制の強化、企業風土の改革、財務ポートフォリオと事業運営体制の見直しと財務基盤の整備を挙げた。

今後、選択・集中する事業分野としてはエネルギーとストレージを挙げ、ヘルスケア事業に関しては外部資本を取り入れて成長資金の確保を図る。また、医療機器を手がける東芝メディカルシステムズ(TMSC)の株式を売却する意向を示した。

ストレージは主にフラッシュメモリ系で、赤字が拡大しているHDDは構造改革でということだったが、具体的な内容までは踏み込んでいない。また「HDDの売却は?」という質問に対しては、独占禁止法の絡みもあり、ウエスタンデジタルやシーゲートへの売却、または統合は難しいとした。

「新生東芝アクションプラン」の概要(クリックで拡大)

構造改革に関しては「ライフスタイル事業」のPC、映像(TVと考えてよい)、家庭電器(いわゆる白物家電)の事業を大幅に見直す。まず、大幅な人員削減と他社との事業再編も視野に入れた施策を検討。

人員の削減は、ライフスタイル部門だけで6,800名(うち海外4,800名)、半導体事業で2,800名、コーポレート部門で1,000名と、合計10,600名という規模だ。このうち500名は配置転換、残り5,300名のうち半導体の1,100名はソニーグループに移籍する。勤続10年以上の40歳以上に対しては、早期退職優遇制度を適用する見込みだ。海外に関しては「契約を見ているが、状況によっては解雇もある」という。

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PC分野は現在の4,500名体制から3,200名へと削減するだけでなく、PC事業カンパニーであるパーソナル&クライアントソリューション社を分社化。子会社の東芝情報機器株式会社と統合する。また、安定的な利益確保のためにBtoBを中核にすえ、BtoCは国内市場向けを主軸とするとした。

PC・映像・家電の構造改革(クリックで拡大)

一方、ODMメーカーへの開発・委託生産を中止し、不正会計の温床ともなっていた「Buy-Sell取引」も廃止する(Buy-Sell取引の詳細は割愛する)。PCを自社設計・製造とするため、プラットフォーム数は現在の1/3に減らす。ビジネス向けPCのラインナップを整理しつつ、自社設計・生産の範囲内でのみ、BtoC(コンシューマー向け)事業を行う。あわせて、PCと映像の開発拠点であった青梅事業所を閉鎖・売却し、PCの販売台数は300万台まで絞り込む。

映像分野は人員の約8割を削減、国内の高収益製品に特化することで、年間60万台の規模まで縮小する。海外では、基本的に東芝ブランド供与型ビジネスのみとし、事実上の撤退。会見ではインドネシア工場の売却で合意したことも合わせて発表している。PCと映像とも、固定費を前年から半減させることで、2016年中の黒字化を見込む。

家電に関しては、首都圏の拠点を6カ所から3カ所に半減させる。人員削減率が他の2事業よりも低いが、これはすでに人員削減を行っていたためだ。今後は在庫や物流費を減らすことで利益をあげるという。家電まわりについても、将来的な他社との統合を選択肢として排除しない。ちなみに、白物家電で赤字幅が大きいのは、冷蔵庫と洗濯機だそうだ。

2015年度業績予想
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ここでウミを出し切れるか

会見では「痛みをともなうが今、このタイミングで断行することが必要と判断」や「これでV字回復を」という室町社長の発言もあったが、思い出すのが2年近く前、ソニーの2013年度第三四半期決算発表会だ。平井CEOから「ここでウミを出し切って」という意思は感じられたものの、結果的にはV字回復には至っていない(センサービジネスの好調など回復傾向にはある)。

東芝は、PCと映像の台数を絞って利益を出すというシナリオを描く。具体的な道筋を明確に示したとは言えない会見でもあったが、これから徐々により具体的なオペレーションが明らかになっていくとは思う。純粋な希望として、東芝にはぜひとも再建を成し遂げてもらいたい。