―― PMA-50との「棲み分け」についてはいかがでしょう?

宮原氏:ニアフィールドはPMA-50に任せ、DRA-100ではリスニングフィールドを広げようという考え方ですね。そのためにネットワーク再生機能を導入したわけです。それにきょう体が大きくなったぶん、音の余裕度やスピーカーの駆動力も飛躍的に向上しています。よりDDFAの素性や特性を生かせるようになったのではないでしょうか。

山内氏:DRA-100は余裕が違います。PMA-50はこれ以上ないというほどギリギリまで詰め込んでいますからね。そこからパワーを出そうとなると、きょう体サイズを上げざるをえません。とはいえ、フルサイズのコンポよりコンパクトにしていますから、使いやすいとは思いますが。

宮原氏:幅が30cm未満というのは、使いやすさを訴求するうえでギリギリのラインだと認識しています。「デザインシリーズ」ということで、このようなサイズ感にまとめているという理由もありますが。

DRA-100とPMA-50を俯瞰で比べて

―― DRA-100は、出力が大幅アップしていますね?

宮原氏:パワーサプライの部分では、PMA-50に比べて倍近いスペックになっています。

山内氏:発熱の問題がありますから、出力アップを図るとなると大きくせざるを得ない部分はあります。出力が変わらなければ、よりきょう体サイズを小さくしようかという欲も出てきますし。

―― スペックといえば、DRA-100にはUSB DACが搭載されていませんね。

宮原氏:PMA-50はニアフィールドリスニングを狙った「デスクトップHi-Fi」、DRA-100は「リビングHi-Fi」ということで差別化を図っています。リビング向けにはワイヤレスで楽しめる環境を充実させるべきで、再生もネットワークを重視しました。PCの近くに設置されないのであれば、ハイレゾ音源にしてもUSBメモリにコピーして聴くスタイルのほうがユーザビリティは高いだろう、と考えました。

―― では、NASの音源を再生するリスニングスタイルが前提になるのでしょうか?

宮原氏:音質と安定性からいうとNASがベストですが、PCを利用してもいいでしょう。BluetoothやAirPlayもサポートされていますから、視聴スタイルとして一般化しつつあるストリーミングも気軽に楽しめます。まだまだ日本ではネットワーク再生は普及していませんが、カジュアル層との親和性は高いのではないかと考えています。

―― 音質面で意識した点、苦労した点はいかがでしょう?

山内氏:よりクリーンにクリアに、ワイドレンジの方向でブラッシュアップしました。設計的にもパワーに余裕が出ましたから、そのメリットは生かしつつサウンドフィールドを広めに取るようにしています。PMA-50のときに伸び代があるな、と感じた部分を追求しています。Advanced AL32 Processing(デノン独自のアップサンプリング/ビット拡張処理技術)についても、PMA-50のノウハウをクロックの配置などに生かしました。

宮原氏:PMA-50でやりきれなかったこと、たとえばゲートドライバーの追加やFETの出力段強化といったことも地道に積み上げています。

山内氏:電力の瞬時供給能力などスペック面の強化もありますが、実際に作り込んでいくと、それが確実にプラス効果をもたらすかというとそうではないわけです。試行錯誤しましたよ、回路の変更など音に関する検討箇所はPMA-50の数倍にまで増えましたから。ポテンシャルが上がったぶん様々な要素が生じてしまい、それをまとめあげるのに苦労しました。