既報の通り、レノボ・ジャパンは17日、ノートPC向けのXeonプロセッサを搭載したモバイルワークステーション「ThinkPad P」シリーズと、ビジネス向けデスクトップPC「ThinkCentre M」シリーズの新モデルを発表した。これに合わせて記者説明会を開催し、製品の概要について紹介した。
レノボ・ジャパン コマーシャル製品事業本部 高木孝之氏 |
はじめにレノボ・ジャパン コマーシャル製品事業本部 高木孝之氏が、「ThinkPad P」シリーズの説明を行った。「ThinkPad P」シリーズは、Xeonブランドとしては初となるノートPC向けプロセッサである「Xeon E3-1500M v5」ファミリーを採用したワークステーションで、海外では2015年8月に発表済みの製品だ。17.3型モデルの「ThinkPad P70」と15.6型モデルの「ThinkPad P50」をそろえる。
レノボではこれまで、ThinkPadシリーズのワークステーションを「ThinkPad W」シリーズとして展開してきたが、デスクトップワークステーションでは製品名に「P」と付けてブランディングしていたため、これに合わせる形で「ThinkPad P」シリーズとして新たに訴求していくこととなった。
「史上最強のThinkPad」を目指して
高木氏によると、「ThinkPad P」シリーズは「史上最強のThinkPad」を目指して開発されたという。モバイルワークステーションという特殊な立ち位置の製品だが、「これまでのThinkPadにない強力なモデルを作るという開発陣の熱い気持ちが込められている」とのことだ。
その言葉通り、「ThinkPad P」シリーズでは、ノートPC向けXeonプロセッサを始めとして、Maxwell世代のNVIDIA Quadroシリーズや、最大64GBのDDR4メモリ、NVMe対応のPCIe SSDなど搭載可能なモンスターノートPCとなっている。また、上位モデルでは4K解像度のディスプレイが選択できるほか、オプションとしてカラーキャリブレータも用意している。
モバイルワークステーションは、デスクトップのそれに性能が及ばないため、用途やニーズによって使い分けるという形がこれまでは一般的だったが、「ThinkPad P」シリーズでは、ハイスペックを武器にエントリーデスクトップの領域までカバーできるようになった。
「Xeonを搭載したノート」にとどまらない工夫も
高木氏は続いて、「ThinkPad P」シリーズに詰め込まれたレノボならではのこだわりを紹介。1つ目は冷却システム。「ThinkPad P」シリーズでは、冷却に同社が「FLEX Performances Cooling」と呼ぶ冷却システムを採用する。
ゲーミングノートPCでたびたびみられる構造だが、熱源となるCPUとGPUをヒートパイプで連結し、CPUが発熱するときはGPU側に、GPUが発熱するときはCPU側に熱を移すというものだ。CPU側とGPU側にはそれぞれファンを備え、発熱に応じて回転数を調節する。
これにより10%のパフォーマンス向上を実現するほか、従来モデルとくらべてパームレストの温度を最大20%低く抑えることができるという。また、2基のファンのうち、1基が故障しても50~60%のパフォーマンスで動作が可能で、事業継続性の面からもメリットがあるとする。
2つ目はLenovo Automatic Turbo Boostテクノロジーで、システムの状況をモニタリングしつつ、CPU電圧を調整することで、動作クロックの上限にとどまる時間を延ばす機能だ。レノボが行ったテストによると、4Kの動画を1Kにトランスコードする場合、この機能の有無で10.3%の差が生じたという。
3つめはバッテリ駆動時のパフォーマンス向上だ。ユーザーへのヒアリングでは、モバイルワークステーションは、バッテリ駆動時にパフォーマンスが大きく落ち込むため、常に電源に接続して利用しているという。「これではモバイルワークステーションの意味が無い」(高木氏)として、バッテリ駆動時の改善に取り組んだ。
基本的には電源管理のプロファイルの最適化ということだが、ミドルレンジGPUを搭載した他社製品とくらべても、バッテリ駆動時にパフォーマンスが大きく落ち込むことがないという。
このほか、肥大するCADデータに対応した64GBの大容量メモリに加えて、ThinkPadならではの堅牢性やキーボードとトラックパッドといった特徴を備える。特にトラックパッドでは、パッドの下に3つのボタンを新たに配置している。これはCADによる設計現場では、3つボタン式のマウスが広く使われていることから採用したのだという。
「ノートPC向けXeonを搭載した製品はほかのメーカーからも出てくると思うが、ワークステーションとして使い倒せる性能や駆動時間、薄さや軽さ、グラフィックスのパフォーマンス、大容量メモリ、堅牢性や利便性をしっかりとパッケージしたのがThinkPad Pシリーズ」と高木氏は自信をのぞかせ、「ワークステーションユーザーだけでなく、PCのパワーユーザーにもぜひ使ってもらいたい」とアピールした。
日本の要望を取り入れ進化する「ThinkCentre M」シリーズ」
レノボ・ジャパン コマーシャル製品事業本部 大谷光義氏 |
続いては、レノボ・ジャパン コマーシャル製品事業本部 大谷光義氏が、ビジネス向けデスクトップPC新製品の紹介を行った。今回発表されたんは、手のひらサイズの「ThinkCentre M900 Tiny」「ThinkCentre M600 Tiny」、スモールフォームファクタの「ThinkCentre M900 Small」、一体型PC「ThinkCentre M900z All-In-One」「ThinkCentre M800z All-In-One」の5モデルだ。
レノボではコンシューマ向けの「Yoga」シリーズなどで、ネーミングルールを変更し、製品シリーズにつづいて、3桁の数字でグレードを表すようになっている。ビジネス向け製品でもこれに習い、今回のモデルではネーミングルールを一新した。
手のひらサイズのTinyシリーズ
さて、個別の製品を見ていこう。まずは「Tiny」シリーズから。今回のモデルで第3世代となったTinyシリーズだが、大谷氏によると「ビジネス向けデスクトップの根幹を成すような製品」にまで成長したという。レノボ内のビジネス向けデスクトップにおける30~40%のシェアを獲得しているとのことだ。
Tinyシリーズは第1世代から日本の顧客の要望を基にした機能が盛り込まれている。例えば電源ボタンに手が届かないような状況での利用を想定し、キーボードのAlt+Pで電源を入れることができたり、Powerd USBによる急速充電、PC用/モバイル用ヘッドセットの対応などだ。
新モデルでも機能強化が図られている。CPUに「M900 Tiny」では第6世代Coreプロセッサ、「M600 Tiny」ではBraswell世代のPentiumやCeleronを採用し、前世代製品と比べてパフォーマンスが向上。一部モデルではM.2 SSDの搭載にも対応する。
また、顧客の要望を取り入れ、オプションでツールレス筐体を選択できる。なぜ全モデルで採用しないのかというと「簡単にケースを開けられては困るというお客様に対応する」(大谷氏)ためなのだという。
このほか、Tinyシリーズは工場内や建築会社の事務室などでの利用も多いことから、ほこりや砂などを防ぐためのダストシールドを用意した。ダストシールドを装着した場合、内部のちりやほこりを36.9%削減できたほか、CPUとHDDの温度も下げることができたという。
スモールフォームファクタやオールインワンも
スモールフォームファクタの「M900 Small」は前世代に比べて筐体が小型化。「日本のお客様の要求仕様を見ると、"幅90mm以下”というものが多く。従来モデルでは102mmだったところ88mmまで削減したほか、奥行きも375mmから357mmと筐体全体を小さくすることができた」(大谷氏)という。
こちらもCPUを第6世代Intel Coreに強化したことで、最大64GBのメモリやPCIe SSDの搭載に対応した。なお、こちらにもダストシールドを用意する。
一体型PC「M900z」と「M800z」は5世代目の製品となる。M900zが23.8型、M800zが21.5型ディスプレイを搭載する。物理的なボタンによる操作体系や電話会議向けにロックスイッチ搭載のカメラや内蔵マイクなどを備える。
ノートPCの高性能化やTinyシリーズのように場所を選ばず設置できる小型PCが増えた中で、一体型PC自体の需要は減りつつあるが、銀行などの窓口業務でタッチ対応ディスプレイを利用したアプリケーションによる応対などを行うケースもあり、カウンターに置けるように薄型化した。また、新たな「UltraFlexスタンドII」に対応した。また、M900ではツールレス筐体の採用やIn/Out対応のHDMIポートを搭載する。
大谷氏は「ThinkCentreは世界共通仕様の製品だが、日本のお客様の要望を積極的に取り入れて、継続的に進化していく」とした。
写真で見る「ThinkPad P」シリーズ
会場には製品の展示も行われていたので、その様子も紹介する。