技術だけでなく「演出」も重要

RoBoHoNは、ロボットをスマートフォンにしたものである。OSはAndroidをコアとしたものだが、画面操作よりも音声操作を軸にしていること、ロボットの動きを反応に生かす要素があることなどから、かなり中身が異なっている。

ここで軸になるのもココロエンジンで、RoBoHoNはシャープのAIoT戦略の象徴となる。ココロエンジンはネットワークの向こうに本質があり、そういう意味では、画面だけだったエモパーが体を持った、とも言えるだろう。

他方で、RoBoHoNの存在は、別の意味でココロエンジンを象徴するものでもある。

RoBoHoNはココロプロジェクト、AIoT戦略の象徴的存在だ

RoBoHoNは、シャープとロボットクリエイターの高橋智隆氏のコラボレーションによって開発されているものだ。高橋氏は、パナソニックが乾電池・エボルタのプロモーション「エボルタ・チャレンジ」に使っている「エボルタ・ロボット」や、ディアゴスティーニから発売された「週刊Robi ロビクルをつくる」などのデザインと開発を手がけた、世界有数のロボットクリエイターである。

ロボットクリエイターの高橋智隆氏。東京大学先端科学技術研究センターの特任准教授であり、ロボ・ガレージの代表取締役でもある

高橋氏が評価されているのは、「ハイテクのロボットを開発するから」ではない。むしろ彼の開発するロボットは、大企業や研究機関がつくるものに比べ、ずっとシンプルだ。だが、技術的に高度なロボットより、「リアル」な部分が評価されている。外観や動作、仕草などのコンセプトをトータルで作る能力に長けており、結果として良いロボットになる。

実は、ココロエンジンのようなAIも似たところがある。

AIとはいえ、人間の感情や反応を完璧に再現することは、現状不可能である。データベースに合わせた反応を積み重ね、人間の側には「リアリティがあるように思える」「かわいいと思える」演出を積み重ねるしかない。別の言い方をすれば、家電におけるAIの価値は「賢く働く」ことだけではなく、「人からシンパシーを感じてもらえるように演出する」ことも重要になるわけだ。

ココロエンジンでソフト的な演出に長けたシャープと、ロボットという物理的に動く機器での演出とコンセプトワークに長けた高橋氏のコンビによって、小さなロボットが「通信機能を持つ人のコンパニオン」になるよう、開発されていくのである。試行錯誤が必要なものであり、一朝一夕な開発は困難だ。こうした部分でシャープは先行を狙う。高橋氏も「他社に5年は先行しているのでは」と自信を見せる。

RoBoHoNは価格も未定で (おそらく、そんなに安くはならないだろう)、ヒットするかは未知数だ。しかし、CEATECでのRoBoHoNへの注目は大変な大きなものであり、ヒットへの第一段階をクリアーしつつある、と期待したい。

【動画】会話しながら自己紹介から写真撮影、プロジェクター投写まで行うRoBoHoN。作業に時間がかかる際は「ちょっと待ってね」と知らせてくれる

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