「ココロエンジン」でAIoTに突き進むシャープ
では、そこでなにをやるのか? 今までと同じジャンルで、同じように製品のクオリティを高くしていくことはできるが、その手法では「そこそこのヒット」は出せても、「見たこともない大ヒット」にはなりにくい。今までにない要素を持ち、独自の進化の余地が大きいものは何か……。そんな観点で生まれたのが「ココロボ」である。
ルンバの登場により、家庭用ロボット型掃除機の市場は一気に立ち上がった。シャープはそのフォロワーという立場である。
だが、ココロボがちょっと違っていたのは、音声での操作及びコミュニケーションの機能を持っていたことだ。家庭用ロボット型掃除機の動きはかわいい。それをより生かすように、音声によって「キャラ付け」して特徴としたのだ。ロボット型掃除機の命は掃除の能力だが、そこで明確な差別化をするのは、意外なほど難しい。だから、視点をずらして「かわいさを強調」する形で商品性をアピールしたわけだ。
同時に、スマートフォンでは「エモパー」というアプリケーションを展開した。これはシャープ製スマートフォンにのみプレインストールされるもので、スマートフォンを「擬人化」し、ユーザーとコミュニケーションを行うことができる。
双方で使われているのは「ココロエンジン」という技術。これはいわゆる人工知能技術とされているが、場所・時間・人の反応と、機器側に用意された機能や情報のデータベースを照合し、適切なものを提示するシステム、と考えていい。家電をネットワークに接続し、ネットワークの向こうにあるサーバーに構築した「ココロエンジン」と連携して価値を高める、という仕組みである。
ココロボやエモパーなど、ココロエンジンを搭載した機器がスマッシュヒットしたことを受けて、シャープは同社の家電製品により広くココロエンジンを使う方針を決めた。シャープの家電部門、シャープ コンシューマーエレクトロニクスカンバニーの長谷川祥典社長は、これからの同社のビジョンとして「AIoT」というキーワードを掲げた。
これは、人工知能の「AI」と、家電にとって重要な要素となりつつある「IoT」を組み合わせた造語であり、中核となるのはココロエンジンである。AIの能力を家電にうまく溶け込ませることを差別化要因とする、と定めたわけである。