話題をApple Watch新モデルに移そう。「Apple Watch Sport」では、ローズゴールドとゴールドという新色が追加された。共に、最高級モデルである18Kの「Apple Watch Edition」でラインナップされていたが(ゴールドは正確に言うとイエローゴールド)、今回アルミニウムで表現されることとなった。実機を見た印象は嫌らしくない品のある仕上がりといったところで、安っぽい感じは全くない。また、「Apple Watch」では、スペースブラックモデルに、エラストマー製のブラックスポーツバンドを合わせたモデルが発表された。スポーツバンドは(PRODUCT)REDをはじめ、新色が登場した。クラシックバックルを取り入れたレザータイプのバンドもカラーバリエーションが増えている。

「Apple Watch Sport」と「Apple Watch」のラインナップが拡充

スポーツバンドもカラーバリエーションが増えた

そしてそして、やはりという感じで登場したのが有名ブランドとのコラボモデルだ。Apple Watch初のコラボレーションの相手は老舗メゾンのHermès。"Simple Tour"、"Double Tour"、"Cuff"という3タイプの展開で、価格は138,000円(税別)から。これ、下手すると、ストラップだけの価格なんじゃないかと思ったのだが、マイナビニュースをご覧のファッショニスタの皆様にはどう映っただろう? Double Tourの二重ループのストラップはHermèsの定番ウォッチでも採用されているので、見覚えある方も多いと思うのだが。ストラップの質感はHermèsの腕時計で使われているものと同じかなという気がした。

通常のApple Watchと異なるのは、ケースの裏蓋部分とストラップの裏側に"Hermès"と刻まれているところと、このモデルのみで使用できるWatchフェイスが存在するという点だ。アップルがサードパーティのWatchフェイスのリリースを排除したことについては、一部から批判の声があがっていたが、これで理由が分かったのではないだろうか。Apple Watchのブランド力を高めるために、アップルはハイブランドの協力を仰いだ。今後もケースはアップル、ストラップとオリジナルのWatchフェイスはそのブランドという方向での協業を進めるのだろう。

ケースの裏蓋部分とストラップの裏側に"Hermès"と刻まれている

しかし、このコラボレーションについては今後が気になるところだ。筆者はアップルのバイスプレジデントのポール・ドヌーヴ氏が Yves Saint Laurentのクリエイティブディレクターであるエディ・スリマンを引っ張ってくると予想してたのだが、そうはならなかった。Hermèsと手を携えたということはケリング保有のSaint Laurentとは組まないということなのだろうか。特別仕様の「Apple Watch Edition」を着用するのを目撃されているカール・ラガーフェルドあたりも怪しいと見ていたのだが、LVMHグループのFENDIでデザインを手がけている以上、彼もまた起用されることはないのだろうか?

そして、今回発表された「Apple Watch Hermès」について言うと、もちろん質は良いとは思うのだが、凄くエッジが効いてるかというとそうでもなく、どちらかというと伝統的なHermèsテイストだなあという印象である。現在のクリエイティブディレクター、ナデージュ・ヴァニー=シビュルスキーの仕事というイメージはない。万人に受け入れられそうなデザインではあるが、冒険がないと言ったらいいのか。もっとも、このスタイルに落ち着いたのはサンフランシスコ市内のショップを見ていると分かる気がする。老舗メゾンの路面店が多く、ちょっと尖ったブランドはBarneys New Yorkかthe archiveというセレクトショップでしか買えない。言ってみれば「モード保守派」の土地柄なのである。そこと拠点が近いアップルが、こういうところに着地点を見出すのも、さもありなんかと。

筆者はWERKSTATT:MÜNCHENとAnn Demeulemeesterのリングを着けているのだが、ちょっと「Apple Watch Hermès」とは合わないかなという気がした。もう少し柔らかい印象のアクセサリーブランドのほうがマッチしそう(Hermèsで揃えるのが一番良いのに決まっているのだが)

なので、前出のエディ・スリマンのようなカッティング・エッジなデザイナーとタッグを組む可能性は非常に低いと見ている。老舗メゾンということでは、Diorのラフ・シモンズが手がけるApple Watchを夢見たこともあったのだが。

ともあれ、これでファッション方面の媒体もApple Watchを無視するわけにはいかなくなってきたのではなかろうか。思えば、Apple Watchの発売日を明らかにしたスペシャルイベントの3月9日は、パリコレのど真ん中。当然、各ファッション誌はパリコレのレポートに終始で、どの媒体見てもApple Watchの記事は影も形もなかった。だが、今回は違う。取り扱い店舗もApple Store 表参道、Apple Store 銀座、Apple Store 心斎橋、Apple Watch at Isetan Shinjuku、Dover Street Market Ginza、Hermès 銀座、Hermès 大阪御堂筋の7店舗に絞り込んできた。4月のように量販店での販売が決まって、オシャレ度ダダ下がりということは完全になくなった。「Apple Watch Hermès」は今年のクリスマス商戦で、一番アツいアイテムになるはずだ。