――そこから、またものづくりの世界へ戻ったきっかけは何だったのでしょうか。

カフェは自分なりの応援の場所だったんですが、カシオを辞めてから2年超、ハードウェアの現場から遠ざかっている間に、どんどん秋葉原の状況が変わっていきました。「DMM.make AKIBA」がオープンしたりして、個人でもものづくりがしやすい環境になっていったんですよ。

そんな状況で、テクノロジー系メディア「Engadget」の方から、au主催のハッカソンに出てみないかと声を掛けてもらって。でも、そもそも「ハッカソン」や「IoT」という用語も知らなくて。なにせカフェのオーナーなので(笑)、ハードウェアの情報が全く入って来ないんですよ。浦島太郎状態ですね(笑)。

エンジニアじゃないし大丈夫かな、と迷ったんですが、企画ができれば大丈夫だからと言ってもらって、出ることになりました。もともとものづくりを辞めたくて辞めたわけじゃなかったので。状況や環境、条件がひとつ整えば、また何かできるんじゃないかとずっと思ってたんですね。

――ハッカソンでは通信機能を持った次世代型のお弁当箱ができあがりましたね。

「XBen」(エックスベン)ですね。お弁当箱にLEDを載せて、おかずを交換すると光るんです(笑)。3Dプリンタを使って、形から、名前付けから、調子に乗ってカタログとWebサイトまで作りました。

XBenの公式サイト。弁当箱のおかず部分が4ピースに分かれており、XBen同士でおかずの各ピースを交換すると、外側に搭載しているLEDが光る仕組み。専用アプリではおかずを撮影できるカメラ機能や、おかず交換可能残数表示機能などを備える

久々にハードウェアの制作で頭をつかって楽しかったんです。でも、ハッカソンはイベントなので、モノを作っても製品にはならない。とても残念で、なんとか「XBen」を量産化したいと思ったんですね。でも、量産化するにはお金が必要なので、この弁当箱を持ってイベントやコンテストに出てみて、お金が入ったら次の基盤をおこしてみようと。

そこで挑戦してみたコンテストの1つが、経済産業省のフロンティアメイカーズ育成事業でした。日本のニッチなプロダクトを海外へ派遣するという事業なんですが、運良く採択されて、そこでCerevoの岩佐さん(UPQのサポート企業でもあるCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏)や、DMM.make AKIBAの小笠原さん(スタートアップ育成事業を行うABBALab代表取締役の小笠原治氏)に、相談役としてついてもらいました。当時はお二人のことも知らなかったので、ググって調べましたね(笑)。