――会社を辞めた後は、秋葉原でカフェを経営していましたね。思い切った方向転換に見えますが。

ものづくりをしたい気持ちはあったんですが、どうしようか悩んでいたところ「家電メーカーにまた入っても、内情はどこも一緒だよ」と人に言われたんですね。それで、ひとまずメーカーでのものづくりは諦めてみようと思いました。

自分に何できるかなと考えた時、気がかりだったのがカシオの仲間のことです。一緒に離散してしまった同期や先輩方の中には、高い技術力があるのに再就職できず、技術に携わらない仕事を望まずやっている人もいました。人生諦めようか、死んじゃおうかという人もいて。

何かできることはないかと考えて、「私がカフェを開いたら、皆集まってこれるんじゃないか」と。単純ですけど(笑)、秋葉原のようなハブの駅で、電子部品を売っているような場所で店を開いたら、皆来てくれるんじゃないかと思ったんですね。とにかく周りの人が立ち直るまで、応援する場所を作ろうと思ってカフェを開きました。

――ひと息つくためのコミュニティを目指した場所だったと。今までにカフェや飲食店などで働いた経験があったのですか?

実はカフェ経営の経験もないし、しかも生クリームが嫌いなんです(笑)。でも、お店を軌道にのせるために、カフェではパンケーキの提供を始めました。季節ごとに違うデザインのパンケーキを考えたらお客さん来てくれるんじゃないかとか、写真映えする盛りがいいんじゃないかとか。平日限定とか、10時まで限定とか。

何か施策をやったらお客さんがどういう風に動くか、というマーケティングも含めて、自分なりにできる範囲でものづくりをやっていった時期でした。商品企画的な考えは、携帯電話作っていたときと変わらないですね。

2012年当時は、ハードウェア・スタートアップが集まれるこういう場所(同社が入居している「DMM.make AKIBA」はシェアオフィススペースがある)もなく、そんな場所が生まれる潮流もなかった。私が考えられた唯一の場所が、カフェがあって、コーヒーを飲んで、ゆっくりしてもらう、そんなことだったんですね。この場所は、UPQとは別のものとして引き続き経営していきます。

ハードウェア・スタートアップの支援スペース「DMM.make AKIBA」。ハードウェア製作に必要な最新業務用3Dプリンタや計測・試験機器を揃えるほか、シェアオフィス機能やイベントスペースも設ける