プライベートからビジネスへ向かう「iPad」、そしてApple Watchは……

明言されることはなかったが、AppleはiPadに関してひとつの決断を下しているように思う。見出しに書いたとおり、「プライベートからビジネスへ」という決断だ。今回のiPad関連の発表には、そんな雰囲気がそこかしこに漂う。

それを象徴する新機能……ならぬ新機軸が「Smart Keyboard」と「Apple Pencil」だ。これまでAppleは、iOSデバイスに関してはキーボード/マウスという(おそらく彼らも「レガシー」かどうか判断しかねる)デバイスを排除した設計を貫いていたが、オプションとはいえそれをApple純正品として用意した。さすがにマウスはスタイラスペンの形状を採用したが、より直感的なUIへと突き進んできたここ10年ほどのAppleの動きからは違和感がある。

ケース兼キーボードのSmart Keyboardを装着した「iPad Pro」。明らかにビジネス用途を意識している

「iPad Pro」というデバイスは、その路線にピタリとはまる。重く大きいiPadの役割はもっぱらCPU兼表示装置で、机に置き「Smart Keyboard」と「Apple Pencil」で操作する、PCとタブレットの間を行くようなデバイスを目指したということだ。これが、AppleなりのSurfaceや2in1型PCへのひとつの回答なのだろう。であれば、4Kの解像度を備えるがiTunes Storeは4K動画配信に対応しない、という状況も説明がつく。スリムでパワフルな、ビジネス用デバイスなのだ。

一方、我が道を行くのが「Apple Watch」。こちらは発売から半年という事情もあってか、Appleからは新色(ゴールド/ローズゴールド)とレザーバンドの追加と「watchOS 2」のリリース日発表にとどまった。エルメスから高級レザーバンドが、という話はイベントに添える花だと解釈するにしても、今後このプラットフォームをどう進化させるのか。大規模な発表会はそれほど多くないだけに、もっと饒舌にビジョンを語って欲しかったように思う。

新OSのリリース日が9月16日とアナウンスされた「Apple Watch」。オーナーとしては、もっと饒舌にビジョンを語ってほしかったが……