売れるのか? 「Apple TV」

iPhone同様、新モデルが発表されると確実視されていた「Apple TV」。初代はOS X、2代目以降はiOSと、いずれも他製品向けのOSをカスタマイズすることでシステム対応してきた。それが、4代目となる今回から「tvOS」なる独自OSが用意されるという。iOSのカスタマイズ版と推測されるが、敢えて分岐を明確にしたのはAppleの意気込みゆえだろう。

意気込みありと判断した最大の要因は、App Storeのサポートだ。iOS向けアプリを流用するのではなく(ソースコードレベルでは高い互換性がありそうだが)、tvOS用に最適化されたアプリを展開することでクオリティを維持する。はっきり言えば、狙いはゲームだろう。

そのため、リモコンを「Siri Remote」に一新。タッチ対応およびSiriボタンを追加、加速度センサーとジャイロスコープを内蔵するということは、エンターテインメント路線に重力配分するという意思の表れだろう。従来のApple TVはオーディオ&ビジュアル指向のSTBだったが、今後はゲームコンソールに近くなる。スペックからいえば、ライバルはPS4やXbox Oneではなく、Android TV、あわよくばWii Uというところか。

タッチサーフェスと各種センサーを備えるリモコン「Siri Remote」は、新しいApple TVの顔だ

売れるか売れないかでいえば、苦戦するのではないかと見ている。iPhoneでゲームを楽しむユーザは多く、それを支えるApp Storeを含め一大プラットフォームに成長しているが、その強みは常に持ち歩くiPhoneという導線あってこそ。Apple TVの場合、自宅に帰り電源を入れ、テレビの入力をHDMIに切り替え(現状放送波からの導線は期待できないだろう)、さらにApp Storeへとアクセスしなければゲームを選べない。その導線の部分では、テレビのOSとして採用が進むAndroid TVのほうが上。4K対応はなく、ブラウザ(Safari)は見当たらず、価格も149ドルと微妙だ。

ゲーム機としての用途を狙っているようだが、いわゆるゲーマー層狙いでないことは明らか。Appleが目指す先に"どじょう"はいるのだろうか

個人的に、歴代Apple TVの強みは「AirPlay」だと考える。コンテンツはiPhone/iPadで入手し、Apple TVはそれを受信して映すだけ。レシーバーというかレンダラーというか、DLNAでいうところのDMRとしての機能に徹したほうが導線が生きると思うのだ(アクションゲームには向かないが)。新しいApple TVは、デバイスとしての個性を発揮する余地は少ないにせよ、主役のiPhone/iPadを盛り上げる脇役に徹すべくChromecastの方向へ舵を切るべきだったように思うのだが、いかがだろう?