Appleが考えるiPod touchの位置付け

一方で、iPod touchは別の理由で生かされている側面がある。iPhoneに比べ低価格で、携帯電話会社との契約もないため月々の維持費が安いiPod touchは、学生や日々の維持コストを下げたいと考えるユーザーには、iOSデバイスを利用するのに最適な存在だろう。iPod touchが現行の第6世代の製品を除き、これまで新学期シーズンの9~10月に新製品が常に投入されたきたのも、こうした層をターゲットにしてきたこととは無縁ではない。

Touch IDが今回も搭載されないなど、コスト低減を目標に設計されたことがわかる第6世代iPod touchだが、コスト増要因である「背面カメラの800万画素への強化」を行うなど、ライトユーザー向けながらも、ユーザーニーズの高い比較的利用頻度の高い機能はしっかりと強化されている(ただしサファイアレンズカバーは採用されていない)。これはAppleが「iPod touchを比較的主要な製品ラインとして強化してきている」ことを意味していると推察する。

iPod touchは主要な製品ラインに

これに関して、2つほど面白い話がある。1つはBusiness InsiderがSociete GeneraleのアナリストAndy Perkins氏のデータを交えて紹介したもので、Appleの会計年度で2015年第2四半期(1~3月期)のiPhone 5sの販売比率が、直前の四半期と比較して10%から20%程度の水準まで急上昇しているという話だ。新型iPhoneの売上が最大の商戦期である第1四半期(10~12月期)を経て、翌四半期以降に落ち込むのは通例だが、このデータが意味するのはiPhone 5sが変わらず売れ続けているというだけでなく、むしろニーズが増えて販売台数が伸びている可能性さえあるということだ。

理由は2つ考えられ、1つは旧モデルということでiPhone 5sが新製品よりも比較的安価に販売されていること、もう1つはiPhone 6が4.7インチ、iPhone 6 Plusが5.5インチと大画面化したことで、小型画面の4インチを好むユーザーがiPhone 5sを使い続けている可能性だ。比較的製品ラインナップが潤沢なAndroidに比べ、Appleが出す製品がすべてのiOSデバイスでは「Appleが出さない=製品として存在しない」に等しい。一時期、iPhoneの次期モデルでは「4インチが復活する」という噂もあったが、おそらくAppleとして穴の存在は認識しているのだろう。ゆえに第5世代の製品でiPhone 5/5sと同じスクリーンサイズとなったiPod touchを同サイズのまま維持し、第6世代の新製品としてリニューアルして穴を埋めようと考えてもおかしくはない。