Appleの決算とApple Watchの今後の行方

Apple Watchの不調が伝えられる一方で、筆者は今月21日に発表される第3四半期決算の内容はそれほど悪くないと考えている。Apple Watchの実績についても、多くのアナリストや投資家らの推測範囲内に収まっているだろう。むしろ問題は前項にもあるように、スタートダッシュ以降の販売ペースが持続するかのほうが重要になってくる。

Apple Watchの第2世代が登場するのは少なくとも1年後とみられ、それまで現状のハードウェアでやりくりしなければならない。おそらくiPhoneなどのすでに実績ある製品と比べ、初速を失ったApple Watchが販売ペースを持続するのは難しく、ハードウェアやOSが洗練され、周辺環境が整ってくる1~2年後までは比較的厳しいビジネスが続くだろう。

Appleは通例で新型iPhoneの登場する第1四半期(10~12月期)の売上が最大となるが、その直前の第4四半期は製品ラインも薄く、iPhoneなどの買い控えもあり、売上推移で谷を形成する。本来であれば、Apple Watchはこの穴を埋めることが期待されるのだが、当面は若干の上乗せ要因に収まると予測する。

もう1つ筆者が気になっているのは、Apple Watchがどの程度、Appleにとって効率のいいビジネスかという点だ。iPhoneがハードウェア事業としては驚異的な利益率の高さでAppleの業績に貢献しているのはいうまでもないが、おそらくApple Watchは現状で利益率の面であまり効率がよくない。

IHS Technologyは349ドルで販売される「Apple Watch Sport」の部品コストを83.70ドル程度と見積もっているが、これだけを考えれば原価率は3割を切っており悪くない。

だが、これまでにかけた開発費や店舗改装や宣伝に伴う販売マーケティング費用、そして年間2億台以上が販売されるiPhoneに対して、現状でその1割の販売台数に満たないことを考えれば、赤字ではないものの大きな業績のプラスにはつながりにくい。

Apple WatchはWi-Fi通信で独立動作可能なものの、基本的にはiPhoneとのペアで利用することが前提になっており、Appleとしては最終的に「iPhone販売のさらなる増加」と「周辺機器販売によるプラス業績」を達成できればいいと考えているのかもしれないが、この目標を達するには少なくともiPadに近い年間5000万台クラスの実績が求められるだろう。

最高級モデルのWatch Edition

また、ラインナップ間のバランスもApple Watchでのポイントだ。MarketWatchが報じたSliceの販売データによれば、Apple Watchの米国内での全販売台数のうち3分の2がSportで、高級モデルのEditionは2000台に満たないという。もともとAppleは売上や利益でEditionの存在を重視しておらず、ショウケースやブランド宣伝的な位置付けで考えていると思われ、むしろ利益の源泉としては無印のApple Watchの販売台数を伸ばす意向だと考えられる。