説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「iPhone 6の表面はサファイアガラスじゃないから"残念"なの?」という質問に答えます。

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そんなことはありません。iPhone 6/6 Plusに搭載された液晶パネルの表面は、アルカリアルミノ珪酸塩ガラスを主な素材とする特殊強化ガラス -- コーニング社の「ゴリラガラス」 -- が採用されていますが、サファイアガラスと比較して一長一短あります。少なくとも、"残念"というほど見劣りすることはないでしょう。

一般的にサファイアガラスは、粉末状の酸化アルミニウムに強い圧力と熱をくわえて製造されます。人工のため不純物はほぼ含まれず、ガラスと比べて遜色ない透過性/透明度を実現します。ダイヤモンドに迫る硬度ゆえにひっかきキズさえできにくく、シート状に加工すればスマートフォンの表面素材に適しています。

問題は製造コストです。人工的に生成されたサファイアの塊を薄くスライスすることには、最新の設備と高い生産技術が求められるからです。特殊強化ガラスに比べ数倍のコストがかかるとも言われています。

重さも悩ましい点です。サファイアガラスはゴリラガラスなどの特殊強化ガラスと比較すると、数十パーセント重いため、同じ重さに保とうとすれば薄くスライスしなければなりません。薄くするとそのぶん強度が低下するため、割れやすくなります。

ところで、iPhone 6/6 Plusのホームボタン表面とiSightカメラのレンズカバーには、サファイアガラスが採用されています。その程度の大きさであれば、同じ厚さの特殊ガラスとの重量差はわずかですから、コストが高くても引っかきキズに強いというメリットをAppleは選んだのでしょう。高級スマートフォンに位置付けられるiPhoneですから、多少高価でもサファイアガラスを指向する消費者は多いことでしょうが、2014年の時点においては合理的な判断だったのではないでしょうか。

iPhone 6/6 Plusでのサファイアガラスの採用は、ホームボタン表面とレンズカバーに留まりましたが、それには合理的な理由があります