NVIDIAは6月1日にGeForce GTX 980 Tiを発表した。要するにAMDの"Fiji"(開発コード名)に対抗するための製品という位置付けだが、それだけにとどまらず、性能はともかく論外なほどに高価なGeForce GTX Titan Xに比べると、まだ個人で買える値段に下がっていることが期待できるモデルだ。
GeForce GTX 980 Tiのスペックについて簡単に紹介すると、表1の様な形になっている。基本的にはGeForce GTX Titan Xと同じGM200コアを利用しているが、
- SMXを24→22に削減
- メモリ搭載量を12GB→6GBに削減
というの差がある。同じ「980」の名前を冠するGeForce GTX 980とはそもそもコアが違う(GeForce GTX 980はGM204)ため単純な比較は難しいが、「シェーダ数×動作周波数」で比較すると22%ほどGeForce GTX 980 Tiが上回る計算になる。また、同じTiのつくGeForce GTX 780 Tiと比較すると、シェーダ数は同じながら動作周波数が若干上回ることになる。
■表1 既存モデルとのスペック比較 | ||||
モデル | GTX TITAN X | GTX 980 Ti | GTX 980 | GTX 780 Ti |
---|---|---|---|---|
ベースコア | GM200 | GM204 | GK110 | |
製造プロセス | 28nm | |||
GPC数 | 6基 | 4基 | 5基 | |
SM数 | 24基 | 22基 | 16基 | 15基 |
CUDAコア数 | 3072基 | 2816基 | 2048基 | 2880基 |
ROP数 | 96基 | 64基 | 48基 | |
テクスチャユニット数 | 192基 | 176基 | 128基 | 240基 |
GPUベースクロック | 1000MHz | 1126MHz | 875MHz | |
GPUブーストクロック | 1075MHz | 1216MHz | 928MHz | |
メモリクロック | 3505MHz | 3500MHz | ||
メモリタイプ | 12GB GDDR5(384bit接続) | 6GB GDDR5(384bit接続) | 4GB GDDR5(256bit接続) | 3GB GDDR5(384bit接続) |
TDP | 250W | 165W | 250W | |
Thermal Threshold | 91度 | 92度 | 98度 | 95度 |
もっともGeForce GTX 780 TiはKeplerアーキテクチャ、GeForce GTX 980 TiはMaxwellアーキテクチャという違いがあるし、ROPの数もGeForce GTX 980 TiではGeForce GTX 780 Tiの倍になっているので、これもどの程度の差があるのかちょっと興味深いところだ。
テスト環境
前書きはこの程度にして、評価用の機材を紹介したい。まずGeForce GTX 980 Tiであるが、見かけはGeForce GTX 780 Tiとあまり違わない。唯一違うのがロゴ、というあたりだ(Photo01~03)。
ただし裏面を見ると、GDDR5のパターンはあるもののチップは実装されていないことが判る(Photo04)。バックパネルの配置もGeForce GTX Titan Xと同じであった(Photo05)。
Photo04:基板そのものはこちらと見比べてもらえると判るとおり、GeForce GTX Titan Xと共通と思われる |
GPU-Zの結果はこんな具合(Photo06)である。TMUの値が234になっているのだが、そもそもGeForce GTX Titan Xですら192しかないことを考えると、GPU-Z側のデータベースのデータのミスではないかと思う。
比較対象であるが、今回はASUSよりMATRIX-GTX980-4GD5をお借りした(Photo07~13)。普通ならばリファレンス同士で比較、ということになるのだろうが、そもそもGeForce GTX 980の場合リファレンス構成で販売されている製品はほとんどないので、これに関しては割り切る事にした。
Photo07:このアングルから見ても、やけに高さがあることが分かる。2類のファンはブレードの形状が異なっていることも判る |
Photo08:逆方向から。異様にカバーがでかいのが分かる。補助電源端子は完全にカバーに隠れており、ちょっと着脱がしにくいのは難点といえば難点 |
Photo11:補助電源は8pin×2構成 |
Photo12:基板の後端(Photo08の写真左下位置)には4pinの補助電源が用意される。これは液体窒素冷却などを使ってのオーバークロック動作時に、メモリに着いた霜を融かす「Memory Defroster」機能用の電源で、一般にはあまり関係無い |
MATRIX-GTX980-4GD5は外観からも判るとおり、同社のR.O.Gシリーズに属する製品で、定格1,241MHz、Boost時1,342MHzに設定されており、どちらもReferenceと比較して10%ほど高いものになっている。GPU-Zの結果(Photo14)もこれを正しく反映している。
これ以外に、一応確認の意味でGeForce GTX 780 TiのReferenceカードを入手できたので、一緒に比較を行った。テスト環境は表2に示す通りである。ハードウェア構成は、GeForce GTX TITAN Xのテストを行った時と全く同一である。ただディスプレイドライバに若干の違いがあるので、こちらと直接の比較は難しいと考えて欲しい。
■表2 今回のテスト環境 | ||
CPU | Core i7-4790K | |
---|---|---|
M/B | ASUSTek Z97-Deluxe | |
BIOS | BIOS 2012 | |
Chipset S/W | Intel Chipset Software V10.0.20 | |
Memory |
XMP-1866 CL10 16GB (Corsair VENGEANCE CMZ16GX3M2A1866C10 8GB×2) |
|
Video | GeForce GTX 980 Ti Reference | GeForce GTX 780 Ti Reference ASUS MATRIX-GTX980-4GD5 ASUS STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5 |
GPUドライバ | GeForce Driver 352.90β | GeForce Driver 352.86 WHQL |
Storage | Intel SSD520 128GB(System) + HGST HDP725050GLA360 500GB(Data) | |
OS | Windows 7 Ultimate 64bit 日本語版+SP1 |
なお、以下のグラフにおける表記であるが
- GTX 780 Ti:NVIDIA GeForce GTX 780 Ti リファレンス
- GTX 980 :ASUS MATRIX-GTX980-4GD5
- GTX 980 Ti:NVIDIA GeForce GTX 980 Ti リファレンス
となっている。