「ロー出しハイ受け」設計で低域のパワーを実現

DACに同じWM8740を積むAK 100とAK Jrだが、液晶サイズとデザイン以外にも大きく異なる点がある。「出力インピーダンス」だ。AK100は22Ωだったが、AK 120で3Ωに引き下げ、以降のAK100II、AK120II、AK240とも2Ω(アンバランス)と低インピーダンス設計が続いてきた。今回ほぼ同時にリリースされたAK 380とAK Jrも同様に2Ωで、いまやAKシリーズに共通の設計仕様となっている。

一般的にオーディオ機器は、外部からのノイズの影響を抑えるためにも出力インピーダンスは低いほうが有利とされるが、AKシリーズはそれだけでなく「ロー出しハイ受け」を狙っている。ヘッドホン・イヤホンより出力インピーダンスのほうが高いとDAP側に負担がかかるばかりか、低域のパワー感(音圧)が不足してしまうからだ。現在流通しているヘッドホン・イヤホンのインピーダンスは8Ω以上が大半という事実も踏まえれば、理にかなった設計といえるだろう。

気になった点を挙げるとすれば、バッテリーパワーだろうか。連続再生時間はFLAC 96kHz/24bitが約9時間、FLAC 192kHz/24bitが約7時間と、アルバム数枚を聴いた程度でバッテリー残量を気にしなければならない。屋外へ持ち出すことを考えれば、せめて半日はもってほしいところだ。

USB DACとして使うときの制約も気になった。OS X Yosemiteが動作するMacBook Air 11インチ(mid 2013)で試そうとしたところ、システムに認識はされても音が出ないのだ。そこで説明書に目を通したところ、「64ビットオペレーティングシステムのUSB 3.0ポートでは、USB DAC機能を使用できません」という注意書きが……。USB 3.0ポートしか装備しない64bit OSマシンが主流という時代、可能であればファームウェアアップデートなどで早急に対処してほしい。

Bluetoothサポートも消化不良気味。AK Jrに食指が動くほどのオーディオファンであれば、aptXやLDACに対応しないかぎり積極的に使おうという気にならないのではないか。この点、ファームウェアレベルでの対応は難しそうなので、今後登場するであろう新モデルのために敢えて指摘しておきたい。

とはいえ、AK JrのSN特性と分離感、低域の描写力はエントリーモデルのひと言では片付けられない水準に到達している。位置付けとしてはAK 380の末弟分かもしれないが、エントリーモデルでもこのクオリティの高さ、とむしろポジティブに解釈したい。USB DAC機能の64bit OS/USB 3.0対応という宿題は残るものの、この価格帯のハイレゾ対応DAPでは突出した存在であることは確かだ。

Bluetoothに対応しているが、どちらかといえば付随機能という位置付けだ

64bit OSが動作するマシンのUSB 3.0ポートでは、USB DACとして動作しない(認識されても音が出ない)

■主な仕様
ディスプレイ:3.1 TFT液晶(480×800ピクセル、静電容量式タッチパネル)
バッテリー:リチウムポリマー(1,450mAh)
内蔵メモリ:64GB(システム領域含む)
外部メモリ:microSD×1(最大64GB)
AC:Wolfson WM8740×1
USB DAC機能:44.1~96kHz/16bit、24bit
サンプリングレート:最大192kHz
DSD:2.8MHz(PCM 88.2kHz/24bit変換)
量子化ビット数:最大32bit(24bit変換)
対応フォーマット:WAV/FLAC/MP3/WMA/OGG/APE/AAC/ALAC/AIFF/DFF/DSF
ワイヤレス:Bluetooth A2DP/AVRCP
サイズ:W52.9×H117×D8.9mm
重量:98g