SNのよさと分離感、低域の描写力

AK Jrの生い立ちとスペックを概括したところで、各種ハイレゾ音源を試聴したインプレッションを報告したい。利用したヘッドホンは平面磁界駆動方式ユニット採用の密閉型「OPPO PM-3」、広いレンジで緻密な音を聴かせてくれるブランニューモデルだ。

試聴は密閉型ヘッドホン「OPPO PM-3」を中心に、開放型のAKG K612 PROなどを交えつつ実施した

まずはSteely Danの「Jack Of Speed」(FLAC、96kHz/24bit)。イントロ部分のハイハットが精緻で、スネアのアタックもすばやく収束する。バックに聞こえるベースは低く沈むが輪郭は滲むことなく、ソリッドな印象だ。シングルDAC構成ながら左右の分離感は明快で、ボーカルの定位も鮮やかに決まる。続けて聴いたDaft Punkの「Get Lucky」(WAV、88.2kHz/24bit)も、中低域がもたつくことなく立ち上がり/立ち下がりがすばやい。

CD音源も好印象。Yutakaの「Brazasia」(ALAC、44.1kHz/16bit)は、倍音成分豊富な和琴の音もすっきり、特定の帯域で押し出しの強さが気になることもなく、CDらしいキレで楽しめた。この曲は他のシステムでアップスケールして聴くこともあるが、SNに優れるAK Jrでは、"素"ならではの魅力を引き出せたように思う。

一方、DSD再生は兄貴分に譲る。JiLL-Decoy associationのアルバム「Lining」は、KORG ClarityでDSD録音されただけあって、以前AK240で聴いたときはドラムブラシの微細な音からボーカルのリップノイズまでその生々しさに驚嘆したものだが、DSD 2.8MHzをPCM 88.2kHz/24bitにダウンサンプリングするAK Jrでは、空気感と音場感にどうしても物足りなさを感じてしまう。DSD 5.6MHzに対応しないこともあり、割り切りが必要な部分かもしれない。

ボリュームは0.5刻みの152段階と細かく調節できる

音量調節は右側面に配置されたダイヤル状のボリュームコントローラで行う

DSD 2.8MHzの再生にも対応するが、PCM変換(88.kHz/24bit)される