米Wall Street Journalオンライン版が3月16日(現地時間)に関係者の話として報じたところによれば、米Appleは現在オンラインでのTVサービス提供を計画中だという。今秋サービス提供に向けていくつかのTVネットワーク会社との交渉を進めており、主要チャンネルを含め25局程度を含む配信サービスになる見込みだ。

現在Appleの新サービスで提供されるTV局のラインナップはABC、CBS、Foxなどで、Apple TVといったApple製デバイスを通じて視聴が可能になるという。ただしCATVや衛星で提供されるフルサービスとは異なり、いくぶんかプログラムそのものが"スリム化"したものになるようだ。

一方で3大TVネットワークの1つであるNBC擁するNBCUniversalは今回のサービスに参加していない。その理由として、昨年2014年時点でTVのストリーミング配信サービス提供をAppleとともに目指していたNBC親会社のComcastが交渉が暗礁に乗り上げたことが背景にあるという。当時、豊富なコンテンツを持つComcastとUIやユーザーのリテンションが高いAppleのそれぞれの強みを活かすことが念頭にあったとみられるが、Comcast側が自社の提供するX1というWebベースのSTBサービスに固執したこともあり、Apple側が交渉を降りたという見方だ。ただ主要ネットワークなしにAppleが新サービスを立ち上げるのは難しいのではないかという業界幹部の声もある。

具体的な内容は不明だが、おそらくは有料サブスクリプション型のサービスになると考えられる。現在TVネットワーク各社は視聴者のCATVや衛星TVサービス離れを受けて配信収入減少に悩まされており、Apple向けのコンテンツ提供が新たな収益源になると考えている可能性が高いからだ。

一方で前述のように「フル放送」とは異なる形態が提示されており、サービスそのものは25チャンネル選択が可能であっても月額10~20ドル程度の安価なもので、今秋のiPhone新製品とiTunesのアップデートに合わせて目玉サービスの1つとして紹介されるのではないだろうか。WSJによれば、先日の発表会で提供が発表されたHBOのストリーミングサービス「HBO Now」は、この"メインディッシュ"の"アペタイザー"的なものであるとの関係者の声を紹介している。

3月開催のAppleスペシャルイベントで米HBO CEOのRichard Plepler氏が登壇して月額14.99ドルのストリーミングTV配信サービス「HBO Now」発表。本来はCATV契約でも(当該チャンネルを含むと)料金プランが高くなるプレミアムチャンネル扱いのHBOであり、その本命は"安価"に提供される25チャンネル配信サービスのほうだろう