スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「ワイヤレス給電」についてです。

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ワイヤレス給電は、非接触/無接点で電力を供給する技術の総称です。金属接点を使わないため、端子やコネクタ、電源ケーブルが不要なことが最大の特徴でありメリットです。電動歯ブラシなど消費電力が小さい機器向けには以前から実用化が進んでいますが、従来技術ではスマートフォン向けとしては供給電力が小さく、より大きな電力を供給できる規格の策定が進められてきました。

民生機器向けワイヤレス給電の技術は、「電磁誘導方式」と「磁気共鳴方式」に大別できます。前者はすでに製品化が進められており、ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(WPC)が中心となり策定された「Qi(チー)」と、パワー・マッターズ・アライアンスの規格(PMA)が知られています。

スマートフォンの分野では、ここ日本ではQiが先行しています。Nexusシリーズに採用されているほか、NTTドコモがAndroid端末に「おくだけ充電」として採用を進めています。WPCには多くの日本メーカーが参加しており、飲食店にQi対応の非接触充電マットを設置する試みも行われています。

MR方式では、アライアンス・フォー・ワイヤレス・パワー(A4WP)が策定した規格が有望視されてきましたが、2015年中頃をめどにPMAとの統合が発表されています。PMAとA4WPは基づく技術方式が異なりますが、単一規格とはせずそれぞれの長所をオプション化し、利用シーンに応じて最適な技術を選択できるようにする方針です。

しかし、NTTドコモの2014-2015春冬モデルに「おくだけ充電」対応端末が見られなかったように、急速に普及する気配はありません。これは、需要が少ないというより、現行のQi規格が急速充電に対応していないため、大容量バッテリーの充電には時間がかかってしまうことが原因と推測されます。

もっとも、Qiを例にすると、15W給電を可能にする新仕様(Volume II Middle Power)が策定され、2014年末には対応チップの提供も開始されていますから、再び対応端末が増える可能性はあります。他の方式/技術も給電力の増強に力を入れていることから、長期的にはワイヤレス給電が普及していくと見てよさそうです。

WPC(Qi)とPMAの両規格に対応したワイヤレス充電機能を備える「Samsung Galaxy S6」

(記事提供: AndroWire編集部)