Apple Watch:iPhone依存からの緩やかな脱却

直近の2015年第1四半期決算を見ると、Appleの業績のiPhoneに占める割合は68%を超える。前述の通り、Macも、OS X YosemiteとiCloudによって、iPhoneとのコンビネーションが強化され、またMacBookはiPhoneユーザーのためのノートパソコンという色合いが強い。

4月10日予約開始、4月24日発売となるApple Watchもまた、iPhone 5以降と組み合わせて利用するiPhoneのためのウェアラブルデバイスだ。同時にリリースされたiOS 8.2にはApple Watchの設定アプリが追加され、発売を待つばかりとなった。

Apple Watchは腕時計らしいデバイスに

Apple Watchは非常に腕時計らしいデバイスとなった。Appleは「腕時計の再発明」という言葉を一度も使わず、むしろ完成された機能と形に敬意を払いながら、Apple Watchを作り上げたことがよく分かる。そのため、正確に時間を知ることと、ファッションを構成するアイテムになることという、腕時計全体の目的は共有する。

その一方で、Apple Watchがどのように生活の中で役立つか、Appleはプレゼンテーションの中でたくさんの例示を行った。どれも、iPhoneを前提に再構成された我々の生活の中で、「こうなったらいいのに」という役割を手首に持たせる機能だった。

詳しい機能やアプリについてはここでは触れないが、全体を通じたメッセージとして、「緩やかなiPhone依存の脱却」が流れてていたのではないか、と感じている。

例えば、ジョギングに出るとき、AppleはiPhoneを自宅において、Apple Watchだけで外に出られるようにした。音楽は2GBの領域を割いて、Apple Watch単体で再生でき、ワイヤレスヘッドフォンにも対応する。スポーツトラッキングはもちろん、喉が渇いたらApple Payで水を買うこともできる。

30分から1時間の間、iPhoneをポケットや腕に巻き付ける必要はなく、他の人からのメッセージは届かず、走ることに集中できるのだ。同様に、人と待ち合わせているときにも、iPhoneをポケットの中やカバンの中に入れっぱなしでよくなる。時間を確認することはもちろん、通話もメッセージも、Apple Watchだけで受信できるからだ。

人と会話しているときも、机の上にiPhoneを置いておく必要はない。確かに時計を気にする動作はコミュニケーションにとってはマイナスだが、ケータイの画面に集中するよりはマシじゃないか、とも思う。

こうして、iPhoneを前提にしながらも、人々はApple Watchによって、iPhoneから緩やかに脱却することができるようになる。あるいはApple WatchがLTEの通信をサポートして直接クラウドにつながれば、iPhoneが不用になるかもしれない。

すぐにそうしなかったのは、やはりApple自身がまだiPhoneから離れられない点、そして電池などの技術的な発展が追いついていない点で、時期尚早と言うことだろう。