既報のとおり、レノボ・ジャパンが法人向けの高性能ワークステーション新モデル、「ThinkStation P700」ならびに「ThinkStation P900」を発表した。あわせて、同モデル特徴を開発担当者らが解説する記者説明会が開かれたので、その内容をお届けしたい。

最初に、同社Think製品事業部 部長の仲西和彦氏が、「レノボ製品戦略におけるワークステーションの意味」と題して、同社の製品ポートフォリオにおけるThinkStationの立ち位置そのものについて説明した。そもそもの話から入っているわけだが、これは、(ほかのノートパソコンやタブレットなどの花形製品に比べ)市場としてはニッチにも思えるワークステーションを、同社ではあえて製品戦略全体の中でも重要視してことをあらわしている。

レノボ・ジャパン Think製品事業部 部長の仲西和彦氏

Think製品群における、ThinkStationのブランドポジショニング

同社がワークステーションを重要視する理由として、まずは「先進性」と「フィードバック」の2つがキーワードであるという。PC業界のテクノロジリーダシップを確保するため、基礎技術の発展応用や、独自技術の開発などに、この分野の製品は最適であるとし、また、ワークステーションを利用する"高度な"ユーザー層からの豊富なフォードバックは、他のジャンルの製品の開発へも波及する貴重なものであるという。実際、ThinkStationでの技術開発、ユーザーフィードバックが、同社の中でコンシューマ製品の開発に活かされた事例も多くあるとの事だ。ついでに、直接的な実利の面でも、ワークステーションは収益性の面で優れているという側面もある。

同社の基本戦略となる、パソコンを中心に幅広い製品市場を開拓していくPC+の領域において、ワークステーションは、同社の他の製品ジャンルへの波及効果も重要で、「主役になるのではないが、牽引する存在」(仲西氏)という

もちろん、単価や利益率は大きいので、収益面でも大事な存在。シェアも好調だそうで、このスライドはワールドワイドのものだが、日本市場に限っても似た推移とのこと

そのような注力環境の中にあって、今回同社が改めて「次世代ワークステーション」とアピールして投入する製品が、今回のThinkStation P700とP900だ。ThinkStation Pシリーズ自体は、直近の前世代で言えばThinkStation D30/C30/S30/E30といった、アルファベットに2桁の数字を足した世代の製品から設計を一新し、既にThinkStation P300/P500が今年第2四半期に登場し立ち上がり済みのシリーズ。ただ、P300/P500が前世第に当てはめるとエントリーからパフォーマンスクラスを置き換えるモデルだったところ、今回のP700/P900は、前世代でカバーしていた領域を超える"超"ハイエンドまでもカバーできるラインナップとして位置づけられる。

それだけに、P700とP900の実現したスペック、投入された各種技術は見どころが多い。主だったものを、同社Think製品事業部 エンタープライズ製品担当プロダクトマネージャで、この製品を担当した高木孝之氏が解説した。

レノボ・ジャパン Think製品事業部 エンタープライズ製品担当プロダクトマネージャの高木孝之氏

前世代ではカバーしきれていなかった、さらに上位のパフォーマンスを必要とする領域までカバーするのが、今回のPシリーズ製品

P700/P900の概要。スペック面ではストレージ搭載数の多さも特徴

ワークステーションで重要なものを整理し、それぞれに対応する回答を製品に盛り込んでいった

最大のポイントは「モジュラーデザインコンセプト」としており、これは、継続して動作運用させるために高いメンテナンス性を求められる電源やストレージなど内部の各コンポーネントを、その名のとおりモジュラー化したものだ。各モジュラーはツールレス、かつワンタッチで着脱できる。特にP900については、ケーブルの取り回しの必要もほとんどなくしており、ブロックを組み立てるように、直接モジュラーのコネクタで電源やストレージなどを着脱できる。ツールレスで作業できる工夫も徹底しており、高木氏が「ツールレスをうたう製品は多いが、ここまで本当にツールレスなものは無いはず」と言うとおり、マザーボードまわりなども含め、ツールレスで着脱できないコンポーネントは、CPUの冷却シンクくらいとなっている。

まずきょう体の内部を見ただけで「モジュラーデザインコンセプト」の特殊さがわかる。写真左が従来製品で、右が今回のP900だ

こちらは実機のP900で、モジュラーの着脱ノブを全開放したところ

ちょっとしたことだが、フロントの「ThinkStation」ロゴは、ちょうどPlayStation2のPS2ロゴのように回転する。縦置き/横置き時の見た目に配慮したもの

モジュラーデザインコンセプトでモジュラー/ツールレス化したPシリーズのメンテナンスは非常に簡単で、それこそ「子供でもできる」。写真は幼児がP900のパーツ交換をするビデオを流しているところで、まるでレゴブロックで遊んでいるかのように作業していた

モジュラーデザインコンセプトでは、電源ユニットまでモジュール化、ツールレスにした

P900では、ストレージのケーブルマネージメントすら不要

ストレージのモジュール部分。奥に接続スロットが見える

電源ユニットのモジュールは写真のようになっており、マザーボード側のコネクタに差し込むだけで、ケーブルが存在しない

ちなみに電源ユニットの"モジュール"はP900とP700で共通。トラブルの際、つなぎで使いまわすこともできる

フロント5インチベイに装着するI/Oパネルもモジュール化。必要な拡張ポートのみ初期投資、後で必要になったら追加という運用が可能

マザーボード上にメザニンスロットを用意。マルチI/OポートのアダプタやPCIeストレージのアダプタなどを追加搭載できる

内部コンポーネントの着脱が容易な一方、堅牢性が犠牲になっていないのも大きな特徴。同社の製品で"堅牢性"というと、ThinkPadで有名な「拷問テスト」が有名だが、実はThinkStationも拷問テストの"洗礼"を受けた製品となる。大柄なきょう体まるごと、ThinkPadのような落下テストや、振動テストを実施する。ほかにも電磁波の測定や、静電気への耐性、粉塵や高温環境での動作確認など様々なテストを経て製品化されており、その結果、ThinkStationの故障率が競合比で優位というデータも得られているという。

Think名物「拷問テスト」。本体重量で数十キロにもなり据え置き前提のワークステーションで、落下テストまでやっている

また、冷却面での強化、効率化も特徴となる。ワークステーションでは、安定動作にCPUやHDDの強力な冷却が必要でありながら、サーバなどと違い、欲を言えばユーザーが快適に利用するための静音性も求められる。第一が性能と安定であるため、静音性は犠牲になりがちだが、今回のThinkStationでは、新たに「エアーバッフル」と呼ぶ冷却の仕組みを盛り込むなどし、それらの両立を目指した。

冷却方式は「Tri-Chaneel」から「エアーバッフル」へと進化。フロントベゼルのメッシュ吸気孔は引き続き開口率に優れたハニカム構造で、さらに各孔が内側方向に径が狭まる形状となっており、ベンチュリー効果により吸気効率を上げているという

エアーバッフル方式の冷却では、従来の製品で採用していた、フロント部3系等からフレッシュエアーを取り込む冷却機構「Tri-Chaneel」を進化させ、各取り込み経路からのエアフローを、内部パーツの冷却ブロック3系等毎にそれぞれ、複雑に整流板を組み合わせたダクトで区切ることでストレートに排気する。パーツを冷却し暖まったエアーが内部を循環し、他のパーツの温度を上げてしまうことが無くなり、多くの冷却ファンが無ければ冷やせなかったワークステーションでありながら、P900ではたった3個ファンでの冷却が実現した。駆動部品が中心の冷却ファンの個数が減らせることは、故障やメンテナンスのリスクが減るし、静音面でも有利になる。

ワークステーションは性能が最重要であるため、強力な冷却が必要となる。普通は写真のように冷却ファンを増やす

エアーバッフルでは、取り込んだエアフローの効率をとことん突き詰め、ファンを増やさない

写真はCPU部分を冷やすためのバッフル。2基のCPUに対し、それぞれのエアフローが混濁しないようにバッフル内部で区分けされている

ThinkStationで重要なコンポーネントとなるQuadro GPUを提供するNVIDIAから、プラットフォームビジネス本部 部長の林憲一氏もゲストで登場

今回のThinkStationでも採用する最新のNVIDIA Quadroのラインナップ概要

各ラインナップのSPECベンチマーク、最新の活用事例なども紹介