S1の可能性

Apple Watchの心臓部を司るS1。もしiOSのサブセットのようなOSを動かすことができるのであれば、非常に大きな可能性を秘めていることになる。それは、「iPhoneの役割をApple Watchが担うかもしれない」、ということだ。

Apple Watchの心臓部に入っているS1。ここに、無線チップなどが搭載され、樹脂でパッキングされている。AppleのWebサイトでは、外的要素、衝撃、摩耗から電子部品を保護するとしている

現在iPhoneやiPadは、A8やA8Xチップと、M8モーションコプロセッサ、モデムやWi-Fi、Bluetoothでの通信を担うチップなどが搭載されている。S1はこれらを1つのパッケージに内包する。Chipworksによると、S1にはBroadcomのBCM4334が内蔵されているとみられ、802.11nのWi-FiとBluetooth 4.0+HS、FMレシーバーを超低電力で実現する。

プロセッサやパワーマネジメントだけでなく、通信関連のチップを内蔵するS1を、時計の文字盤の裏に配置している「コンピュータ」が、Apple Watchなのだ。

目下、問題点はバッテリーの持続時間だ。Retinaディスプレイ、通信、ある程度高速なプロセッサを実現し、腕時計のサイズに収めるには、バッテリーの容量も限られてくる。製品版でどの程度の持続時間を実現するのかはまだ分からないが、できれば、5日、あるいは1週間持続するよう設計して欲しいところだ。

S1が世代交代をするにつれて、LTEの通信を行えるようになったり、A8のような64ビットプロセッサを搭載するようになると、面白い。Appleのビジネスの中心であり、我々のモバイルコンピューティングの核となるスマートフォン、iPhoneの代替として、Apple Watchが役割を果たす可能性が見えてくるからだ。

S1の可能性はそれだけではない。腕時計に内蔵できるほどの大きさであれば、特別なデザインを施さなくても他の様々な物への活用も期待できるからだ。テレビやスピーカーといったAV機器でも、驚くほど簡単にアプリに対応し、iPhoneのアクセサリとしての役割を発揮できるようになるだろう。また、より多彩な運動計測器具や、家電、家具などへの内蔵も考えられる。Apple Watchに続く、iPhoneのアクセサリとしての「Apple○○/i〇〇」を展開する際に、S1は大きな役割を担うはずだ。